加賀海 士郎

 小生の文章は冗長で読む気が起こらないというのがもっぱらの評判。

 

先輩から「文章を短くすればお前は出世間違いなし」なんて若い頃からよく言われ、自分でも欠点だと分かっていた。

 

 どうやら自分の想いを分かって欲しいって気持ちが前に出過ぎるらしい。

それでついつい説明が長くなる。

         

 現役サラリーマンの頃、部下の女性から面と向かって言われたことがある。

「貴方は有能な方だと思う、でも折角の良い考えも呼んで貰えなければ意味がない」彼女は俺のことを心配して、親身になって言ってくれたのだ。      

 

 “Simple is the best” ビジネスは簡潔明瞭だ。

そんなこと言われなくっても分かってるさ、でも俺は結局、自分の想いを分かってもらいたいという気持ちが勝って、親切な助言に従うことはなかった。

       

「ごまめの歯軋り、田螺のぼやき」 なんて格好つけて自己主張しているが、読んで貰わなきゃ伝わらない・・・結局は何にも広がらない、波風どころかさざ波も起こらない・・・それが世間っていうやつさ。

 

 この世知辛い世の中、自分のことだけで精一杯なのさ・・・貴重な時間を自分以外のために使うなんて愚の骨頂だ・・・なんて悲しいじゃないか、そんな人生。

 いつお迎えが来るか分からないから、人生は楽しいんだよ・・・

残りの時間がどれだけあるか分からないから、“Time is money” とか言ってケチな生き方をしてしまうんだよ。

 

「今を生きる」ってのは、そんなことじゃない・・・

後悔しないように、今を大切にしろというのは、もっと自分に素直に生きろ!とい事なんだけど、自分のためだけに生きろということじゃないんだ。       

 精一杯生きろ、悔いの無いように!

人生は結果ではない、どう生きたかなのだ…明日死んでもいいように今を生きろ!

 

 俺は人生の秋に立っている・・・もう冬が近いかもしれん、だが、まだ暑い季節が続くと俺はそう思っている。

                             

                              (完)