PHP(2023年7月号)の裏表紙より、

                         『ほんとうの志』

                                          加賀海 士郎

 “梅雨空に笑顔を見せる七変化” 

 

 暦の上での入梅は、6月11日らしい、関西は十日あまり前に梅雨入りしたのだが、このところ

台風の影響なのか、霧雨が降ったり曇天が続いている。つい先日は駆け足で一足早い墓参に

故郷の金沢へ出かけた。

 

 お陰さまで、コロナ禍で暫く訪問できなかった甥姪の元気な顔も見られた。9歳下の甥っ子が

車椅子生活になったらしく、面と向かえなかったのが残念だった。悪ガキ時代に遊んだ朋の一人

がどうやらコロナで他界したとのことだがそんな年齢だと再認識した。

山中温泉こおろぎ橋

 まだ終活なんて気はなかったが、樹木葬も考えて見ようと墓参ついでにネット情報を頼りに二、

三ヶ所、当ってみた。思えば、いつ、お迎えが来てもおかしくない年頃(?)当分は死神が訪ねて

きてもまだ早いと言って追い返すつもりだが…。

 常々「新橋の上から犀川に遺灰を流してくれたら良い、いずれは日本海だ。」と言っているが、

どうやらその願いは聞き入れてもらえそうにない。

 今朝も霧雨で、いつもの散歩にも行かず、溜まっていた雑用を片付けながら手にしたPHP7月

号の裏表紙に目を向けると標題とともに次のようなメッセージが書いてありました。

 

 「進学のとき、人生の転機を迎(むか)えたりすると、人はにわかに進路を選択(せんたく)しなけれ

ばならないことに気づく。すると、世間における自分の相場が一気にはじき出され、いつしか人と競合

している現実を知る。

 今さらながら、世の中は多くの人生がぶつかり合い、競(せ)り合(あ)って共存している。誰(だれ)

もが決めてしまった第一志望を頭上に掲(かか)げ、一歩も引きたくない想いで努力を始める。

・・・中略・・・

ヌートリア母子、3頭が丸まって微笑ましい朝

 ともすれば人は、何をしたいかより、どちらが有利か不利かで判断してしまう。そしてあとになって、

第一志望でなければいけない理由など、たいしてなかったことを悟(さと)るのだ。

 

 どんな生きがいをもって生きてゆくのか、自分のほんとうの志にいかにこだわっていくべきか。人生は

長くなったが、志を得るには短い。一度の人生、必要なのはじっくりふり返る時間なのかもしれない。」

 

 そう言えば、私はいつ頃から物事を深く突き詰めて考えるようになったのだろう。いつも腑に落ちない

ことがあると、とことん拘って答えを探すが、所詮、みずからの知恵で解決できるものはそんなに多くない。

 

 最近は大抵のものはネット情報で何かそれらしい答えが見つかる、見つからなくても一旦保留して

けばその内、別の角度から解決できることが少なくない。だから結局いつまでも頭の中に宿題のように

溜まって来るが、その内、自然消滅するか忘却することが多い。

 

 いつの間にかごつごつしたものの角が取れるように丸くなって落ち着いてくる。小柄で身体能力が特段

優れている訳ではないので何をやっても器用貧乏というかB級なのだ。

 

 “吾唯足るを知る”与えられた環境や条件に適応し生きていくしかなかったからなのだろう。未だに

何のために生きるのか?死ぬと、どうなるのか?どこへ往くのか?と言う宿題に拘っている。

自分でも妙な人間だと思う。             (完)