⚪︎2023年6月1日(土) 10:30-  MET LIVE VIEWING 2023-2024 

  プッチーニ「つばめ(La Londine)」  

   於:新宿ピカデリー (現地時間、4月20日午後1時からの公演を収録)

MET LIVE VIEWING 2023-2024シーズンの第8弾はプッチーニの「つばめ(La Londine)」です。「蝶々夫人」、「西部の娘」と「三部作」の間に位置するプッチーニ後期の作品となります。
プッチーニの作品の中では知名度が低く、演奏機会も少ないらしく、確かに殆ど聴いたことがありませんし😅METでも上演は1928年、1936年、2008年に続いて4回目とか。
今回ヒロインのマグダを演じるのは、今シーズンMET LIVEの「カルメン」でミカエラを演じて素晴らしかったエンジェル・ブルー
どんなプッチーニ節?を聴かせてくれるか楽しみに行って参りました


IMG_8184
⚪︎キャスト等:
指揮 スペランツァ・スカップッチ(Speranza Scappucci)
演出 ニコラ・ジョエル(Nicola Joel)

マグダ(T) エンジェル・ブルー(Angel Blue)
ルッジェーロ(T) ジョナサン・テテルマン(Jonathan Tetelman)
リゼット(S) エミリー・ポゴレルツ(Emily Pogolerc)
プルニエ(T) ベグゾッド・ダブロノフ(Bekhzod Davronov)
ランバルド(B.Br)  アルフレッド・ウォーカー(Alfred Walker)


 

 

 

 

⚪︎感想:
うーん、ちょっと期待外れでした
一番の問題はリブレット(台本)でしょうか💦
パリの高級娼婦(courtesan)を主人公とする悲恋、という点で「椿姫」を想起させますが、こちらは元々オペレッタを想定されていた「叙情喜劇」ということで、中途半端さは否めません。

悪く言えば、“愛人との変化に乏しい生活に飽きた有閑マダム(高級娼婦)が、過ぎ去った青春時代を懐かしんで、ちょっとした火遊びを楽しむため、愛人とも別れリゾート地にしけ込むが、相手の青年が本気になったことで我に返り、慌てて青年を置いて去っていく“みたいなメロドラマ風のストーリーで、1幕、2幕となんとなく二人が恋に落ちるまでダラダラと緊張感のない場面が続いたかと思えば、3幕はあっけない幕切れで、やや盛り上がりに欠けるところ。

また、プッチーニの音楽については、1幕のアリア「誰がドレッタの美しい夢を」、2幕後半の合唱を伴う四重唱など、それなりに聴きどころもあり、ワルツのリズムの多様や、東洋風の節回しなど全体に軽やかな作り、プッチーニらしいセンチメンタルな旋律美、達者な情景描写など素晴らしい部分も多いのですが、3幕が短兵急でしかも静かなエンディングとなっているため、あれ、これで終わり?という感じで損な印象を与えています😅
プッチーニとしては「ばらの騎士」を意識して書かれたようですが、残念ながら、そこまでの余韻、余情もなく、「トスカ」などの他の傑作に比べて上演機会が少ないのもやむを得ないところでしょう💦
 

ただ、そこはさすがMET、1920年代のパリのサロン(1幕)、レストラン(2幕)、そしてフレンチリビエラ?の別荘(3幕)を再現したセットは豪華でしたし、衣装も鮮やかでで美しいもので、これは見応えがありました音譜


肝心のキャストは、みんな良かったと思います。エンジェル・ブルーは期待どおり、華やかなビブラートと強い響きが印象的愛嬌ある笑顔もあってややお尻の軽いマグダ(笑)に悪い印象はなく、適役だったと思います主役級の他の三人は皆、本公演がMETデビューということですが、皆堂々としたもので、ルッジェーロのテテルマンに関しては、METのピーター・ゲルブ総裁が冒頭登場して、テテルマンがアレルギー(花粉症?)に苦しんでいるのでどうぞご理解を、と聴衆に依頼するという異例の展開でしたが、特に問題なさそうで、輝かしくも強いテナーを披露敢えて言えば、本人も途中のインタビューで「気合いと力技とお茶で乗り切っている」と言っていましたが、かなり力が入っているような気はしました😅
個人的には、テテルマンより、プルニエを演じたダブロノフのリリックなテノールの方に好感を持ったぐらい、彼の出来が良かったと思います

実は今日一番感動したのは、休憩時間中に行われる恒例の次回作出演者のリハーサル風景の紹介で、今シーズンのラストを飾る「蝶々夫人」のヒロイン、チョーチョーさんを演じるアスミク・グリゴリアンが登場し、3幕のアリア「さよなら坊や」(じゃなくて「坊やの母さんは」でした😅)を歌うシーンが流れるのですが、これがあまりにも素晴らしく、思わず涙が出てくるほど💦
インタビュアー(ジュリア・ブロック)も涙ぐんでいたぐらいで、そのことがあってかどうかわかりませんが、その後本公演の幕間に戻って、ジョナサン・テテルマンにインタビューする際も、本公演の共演者であるエンジェル・ブルーの印象については全く尋ねることもなく、次回作「蝶々夫人」で共演する(テテルマンは、ピンカートンで出演)アスミクのことばかり尋ねていました😅まあ、たぶんアメリカではそれほど知名度のないアスミク・グリゴリアンのMETデビューとなるので、盛り上げを図っている部分もあるとは思いますが😅

ということで、かえすがえすも先月のアスミク・グリゴリアンの来日コンサートで、「ある晴れた日に」の入ったAプログラムも聴きに行けば良かったと激しく後悔した次第です
もちろん、今シーズン最後のMET LIVE「蝶々夫人」、さらに英国ロイヤル・オペラハウスの「蝶々夫人」も必見ですが、こうなったら早く舞台でアスミクが蝶々夫人(でもなんでも良いです、この際)を演じるところを見たいところ。近いうちに新国立で呼んでくれないかなと夢想しております。


⚪︎評価:☆☆★