⚪︎2024年5月31日(金)  ソワレ(18:30-) モーツァルト「コジ・ファン・トゥッテ」 (Cosi Fan Tutte)
     於:新国立劇場オペラパレス


「コジ・ファン・トゥッテ」はこの3月の小澤征爾音楽塾による公演以来、実演では去年2月の新国立劇場オペラ研修所修了公演を含め、3回目となります
序曲や男性三人がCosi Fan Tuttleと唱和する部分を除けば、特に強く記憶に残るような旋律があるわけではない😅のですが、モーツァルトのオペラ・ブッファは大体そうですが、とにかく素晴らしい重唱が目白押し、という印象があります。
キャストは超有名な国際的歌手はいないようですが💦グリエルモの大西宇宙氏を含め、ベテランから伸び盛りまでバランスの良い布陣という感じ、演出はどうやら現代に舞台を移し替えてのようなので、その辺りも楽しみに行って参りました

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⚪︎キャスト等:
指揮 飯森範親
演出 ダミアーノ・ミキエレット(Damiano Michieletto)

フィオルディリージ(S) セレーナ・ガンベローニ(Serena Gamberoni)
ドラベッラ(Ms) ダニエラ・ピーニ(Daniela Pini)
デスピーナ 九嶋香奈枝(S)
フェルランド(T) ホエル・プリエト(Joel Prieto)
グリエルモ 大西宇宙(Br)
ドン・アルフォンソ(B.Br) フィリッポ・モラーチェ(Filippo Morace) 

合唱指揮 水戸博之
合唱 新国立劇場合唱団

管弦楽 東京フィルハーモニー管弦楽団
チェンバロ 小埜寺美樹


⚪︎感想:

IMG_8177いやー面白かったです
何と言っても演出が良かったです
舞台は現代の山間のキャンプ場に移され、巨木や小高い丘地、緑がかなり精巧に再現された上に、キャンピングカーや軽食堂が置かれ、回転舞台で場面が移り変わる趣向。2幕では水の張った小さな池まで登場し、若者たちが素足で水遊びする場面も
アルフォンソはキャンプ場の経営者、デスピーナを軽食堂のメイドに仕立て、2組(アルフォンソとデスピーナを含めて3組)のカップルの恋の鞘当て?が展開します。

舞台がリゾート地?になったことで、リゾートの恋は何とやらで、女性陣があっという間に婚約者を差し置いて別の男に恋に落ちてしまう部分も説得力を持ちますし、なんとなく若者たちが楽しげにわちゃわちゃとやっているドタバタ喜劇の舞台にぴったりでした

そしてラスト(ここから先はネタバラシになります😅)、


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通常なら、アルフォンソがネタバラシをして2組のカップルを仲介、女性陣男性陣とも反省和解してメデタシメデタシ?となるのですが、本演出では、もうやってられないとばかりに、それぞれが椅子を投げたり物を倒したりして大暴れ、恋人に張り手を喰らわしたり突き飛ばしたりとやりたい放題😅、最後は4人がバラバラに舞台の4隅から去っていく(ついでにデスピーナもアルフォンソに平手打ちをかます💦)というバッドエンドで幕となります(笑)
前からこのお話の結末には疑問を持っていただけに、この解釈は実にしっくりピッタリ来ますし、これをやりたくて舞台を現代に移したのかなと勝手に納得した次第です
ラスト、「物事の良い面を見られる者は幸いだ」みたいな歌詞が痛烈な皮肉となってくるところが効いています
個人的には、普通に原案どおり演出されるのを好む方ですが、こういう必然性のある翻案ならアリだなと思った次第です。


IMG_8176さて、肝心のパフォーマンスですが、アルフォンソ役のフィリッポ・モラーチェがちょっと弱く感じたほかは、キャストのパフォーマンスも素晴らしく、長大なアリアが印象的なフィオルディリージ役のセレーナ・ガンベローニ、ドラベッラのダニエラ・ピーニとフェルランド役のホエル・プリエトもよく声が出ていましたし、我らが大西宇宙は余裕を感じさせるコミカルな演技、デスピーナの九嶋さんも自由自在の弾けっぷりで貫禄の出来だったと思います
唯一、飯森氏の振る東京フィルが1幕前半、歌手と息が合ってなかったような気もしましたが、後半はそれほど気にならず、まずまずの演奏でした。

ということで全体に非常に楽しめた公演で終演時のカーテンコールもそこそこ盛り上がっていましたが、本日は平日ソワレのためか、国際的に知名度の高い歌手や指揮者でないせいか、初日にも関わらず、全体では6割程度?の入り。私の座った2階席センターブロッック(A席)も、3、4列目以降はガラガラでした
こんなに面白いのに残念なことです
是非、土曜日以降の3公演には、もっと人が入って盛り上がってほしいと願いながら、劇場を後にした次第です


⚪︎評価:☆☆☆☆