⚪︎2024年3月20日(水) 10:00-  MET LIVE VIEWING 2023-2024  
ビゼー「カルメン(Carmen)」  於:東劇 (METでの上演日は2024年1月27日、13:00-)

今シーズンのMET LIVE VIEWINGの第5弾は、「魔笛」、「椿姫」と並んで上演機会の多い(指揮者のダニエレ・ルスティオーニの言)とされる定番中の定番「カルメン」の新演出とのこと。舞台は現代アメリカで、ドン・ホセは米兵?伍長で変わりないものの、カルメンは兵器工場で働く女工(死語💦)、エスカミーリョはロデオのスターとのことです(笑)

カルメンを演じるアイグル・アクメトチナはカルメン役で今引っ張りだこの新星、この後英国ロイヤルオペラハウスでも同役を演じるとか。写真を見ただけでも確かにかなりインパクトの強いビジュアルで、いかにもカルメンが似合いそうな感じ😅

東劇はあまり長時間の鑑賞には向いていない劇場なのですが、諸々あって先週新宿ピカデリーに行けなかっため、仕方なく東銀座に向かった次第です💦


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⚪︎キャスト等:
指揮 ダニエレ・ルスティオーニ(Daniele Rustioni)
演出 キャリー・クラックネル(Carrie Crackneli)

カルメン(Ms) アイグル・アクメトチナ(Aigul Akhmetshina)
ドン・ホセ(T)  ピョートル・ベチャワ(Piotol Beczata)
ミカエラ(S)      エンジェル・ブルー(Angel Blue)
エスカミーリョ(B.Br)  カイル・ケテルセン(Kyle Ketelsen) 
スニガ(B)   ウェイ・ウー
フランスキータ(S)  シドニー・マンカソーラ
メルセデス(Ms) ブリアナ・ハンター


⚪︎感想:
中々面白かったです
設定の現代への変更が必要だったかどうかはともかく、それほど不自然さもなく物語を壊さない程度に収まっていましたので、まあ良かったと思います😅

とにかくストーリーが面白くテーマも普遍的な上に、音楽が素晴らしいので休憩を挟んでの約3時間40分があっという間でした

ここで再び東劇にイチャモンです(笑)
売店で売っている食べ物以外持ち込み禁止なら、ポップコーン以外にもう少しまともな食べ物を用意して欲しいです

閑話休題

キャストの感想を簡単に。
タイトルロールのアイグル・アクメトチナはスケールの大きな歌唱とエキゾチックな外観で魔性の女を熱演ケレン味たっぷりの歌い回しで、27歳とは思えない余裕と貫禄でしたが、21歳からフルでカルメンを歌っているとのこと納得です。個人的にはちょっとアクが強すぎて胸焼けがしそうな感じもこれあり😅

 

演出のクラックネル氏のインタビューを見て気づいたのですが、従来、「カルメン」は男の視点から見て魔性の女として描かれていたのに対し、今回の演出では女性(カルメン)視点で、男に束縛されない生き方を主体的に選び取る女性として描かれているようです。なので、ラストもホセに殺されるというよりは、自ら死(殺されること)を選ぶ、という感じ。またその流れに沿った演出(例えば2幕冒頭の高速道路を疾走するトレーラー内部でカルメンほか女性たちだけが踊りまくるシーンとか)になっており、こういうジェンダー視点からの古典の再解釈は最近多くなってきているような気がします。

そういう意味では個人的にはアクが強すぎるように感じたアクメトチナの存在感は、この舞台にはうってつけだったと思います😆


対するドン・ホセを演じたピョートル・ベチャワ、ホセ役は比較的最近のレパートリーだそうで、ちょっと線が細い気もしましたが、根が真面目な男が「悪魔のような女」に翻弄された挙句、自制心を失って破滅するという役回りは意外に似合っていたかもしれません💦彼は今回のホセ役でMET14回目の登場とかなんでもこなすヴァーサタイルなテノールとしてMETの看板スターとなっているようです。

ミカエラのエンジェル・ブルーも素晴らしく、この後「つばめ」でもヒロインを演じる彼女をここで使えるのがなんともMETのすごいところです

今日は歌手陣だけでなくオケもメリハリが効いていつにも増して非常に素晴らしく感じましたが、これもビゼーの音楽が素晴らしいからでしょうか。ビゼー自身は「カルメン」の成功を見ることなくこの世を去ったとのこと。この傑作に敬意を払い、初演時の失敗という不当な結果に、正義(Justice)をもたらさなければならないと語る指揮者のダニエレ・ルスティオーニの言葉が印象的でした。


⚪︎評価:⭐︎⭐︎⭐︎★