○2023年7月4日(火) 10:10- MET LIVE VIEWING 2022-2023
W.A.モーツァルト「ドン・ジョヴァンニ(Don Giovanni)」  於: 新宿ピカデリー
(本作は2023年5月20日午後1時からのNYメトロポリタン歌劇場での公演を収録したものとなります)

今シーズンのMET LIVE VIEWINGはモーツァルトの2作で締め括られ、オーラス前はこの作品。モーツァルト3大オペラにして、オペラ・ブッファの傑作とされていますが、内容的には悲劇的な要素も含む問題作?です。

上演頻度の高い作品だけに色々な演出でプロデュースされているようで、以前にDVDで観た2006年ザルツブルグ音楽祭で上演されたマルティン・クシェン演出、ダニエル・ハーディング指揮ウィーン・フィルのヴァージョンも、(今だったら#Me too的に上演が難しそうな💦)かなり思い切った現代的な演出でした😅

今回のものも新演出、しかもトップクラスのモーツァルト歌いをキャスティングしているとのことで、楽しみに行ってまいりました

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○キャスト等:
指揮  ナタリー・シュトウッツマン(Natalie Stutzmann)
演出  イヴォ・ヴァン・ホーヴェ(Ivo van Hove)

ドン・ジョヴァンニ(Br)      ペーター・マッテイ(Peter Mattei)
レポレッロ(B.Br)                 アダム・プラヘトカ(Adam Plachetka)
ドンナ・アンナ(S)              フェデリカ・ロンバルディ(Federica Lombardi)
ツェルリーナ(S)                  イン・ファン(Ying Fang)
ドン・オッターヴィオ(T)    ベン・ブリス(Ben Blis)
ドンナ・エルヴィーラ(S)    アナ・マリア・マルティネス(Ana Maria Martinez)
マゼット(B.Br)       アルフレッド・ウォーカー(Alfred Walker)
騎士長(B.Br)        アレクサンダー・ツィムバリュク(Alexander Tsym Balyuk) 


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○感想:
いやー素晴らしかったです
今までモーツァルトのオペラはどちらかというと響きがちょっと古臭いというイメージを持っていましたが、偏見が消し飛んだ気がします(笑)

レチタティーヴォ、比較的スローなアリア、急速調のカヴァレッタ?のバランスが良く、(型にハマったところがないとは言いませんが😅)どれもが聞き応えがあります
また、この演目では、主役のドン・ジョヴァンニや凖主役のレポレッロは勿論、プリンシパル(名前のある登場人物)には、ほぼ全て聴かせどころの場面(アリア等)が複数あるので、それぞれの歌手の個性や技を楽しめるのも魅力です

まあ、それも良い歌手が揃っての上での話ですが、さすがMET、今回の配役はキャリアのピークにあるベテランから伸び盛りの若手まで、皆勢いがあり、素晴らしかったです

タイトル・ロールのペーター・マッテイ、さすが当代を代表するドン・ジョヴァンニ歌い、なんと言ってもその美声が素晴らしいです輝かしくもソフトなバリトンを駆使して、甘い言葉で歌いかけられたら、プレイボーイとわかっていてもついクラっと来てしまうのも納得の歌声でした💦

レポレッロのアダム・プラヘトカ、プログラムの紹介文には「声に艶と弾力があり」とありますが、その通りで、堂々たる体躯から発せられる豊な響きは、若手ながらペーター・マッティの相手に不足はなく、顔芸も使ったコミカルな演技も良かったです

また、ドンナ・アンナを演じたフェデリカ・ロンバルディも、個人的に好きなタイプの突き抜けソプラノ系(笑)でいて、なおかつしっかりした強さを感じる声質で、なかなか良かったですし、その他のキャストも粒揃いで、それぞれの歌唱を十分楽しむことができました。

演出面では、舞台を現代に置き、場所はsomewhereということで、ドン・ジョヴァンニの(性)犯罪者としての側面や暴力性を強調した演出となっており、かなり攻撃的な暴君として描かれていたのと、女性が物理的暴力にも立ち向かう強さを持った存在として強調されていました。

舞台美術としては、冷酷?な建築物をコンセプトに、エッシャーの絵画からインスパイヤされたという、殆ど廊下と階段しかない3つの大きな建物が印象的でした。残念ながら、あっと驚くとされていたラスト、ドン・ジョヴァンニが騎士長の亡霊によって地獄に引き摺り込まれる場面は、暗いのと近眼なのとで何が起こったのかよく分からず😅誰か教えて欲しいものです💦

ということで、出演者等へインタビュー映像や休憩時間を入れて、4時間近い長丁場でしたが、それほど長さを感じずに楽しく観賞することができました。評判が良いからか、そもそも人気の傑作オペラだからか、平日昼間の上映にも関わらず、今日の新宿ピカデリー、シアター4は8割強の入り。もっとも大半は70代前後の高齢の方々でしたが😅

MET LIVE VIEWING 2022-2023シーズンのラストはモーツァルトの「魔笛」、指揮者は今回と同じナタリー・シュトゥッツマンということのようですので、こちらも楽しみにしたいと思います


○評価: ☆☆☆☆★