○2023年6月3日(土) 13:40-  プッチーニ「トゥーランドット(Turandot)」 於:TOHOシネマズ日本橋
   英国ロイヤル・オペラ・ハウス・シネマ シーズン2022/2023 (本作は、本年3月22日現地時間PM7:15からの公演を収録したものとなります)


MET LIVE VIEWINGの向こうを張って、かどうかわかりませんが、英国のRoyal Opera House(ROH)もオペラやバレエの公演を映画館でライブ上映をしており、こちらは日本では東宝東和が配給、したがってTOHOシネマズ系列で見ることができます

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やっていることはわかっていたのですが、METを追っかけるので手一杯で、こちらをうっかり失念💦気がついたら、「蝶々夫人」「アイーダ」「ラ・ボエーム」「セビリアの理髪師」を見逃し、今シーズン、残すは本作と「フィガロの結婚」「イル・トロヴァトーレ」を残すのみ慌てて行ってきました😅

世界3大歌劇場、には入らなくても5大歌劇場にはたぶん💦ランクインするロンドンはCovent Gardenにある王立歌劇場、単にコヴェント・ガーデンとも通称されるロイヤル・オペラ・ハウス現代の劇場は3代目とかいうことで、円形4層構造のなかなかゴージャスな造り。もちろん、行ったことはありませんが😅

演目も個人的に好きなプッチーニ、トゥーランドットは実演で今年2月に二期会の公演で見ていますが、色んな意味で斬新過ぎて頭の中にクエスチョンが残った印象💦

HPで確認する限り、この公演は二期会で使ったルチア・ベリオ補筆版でなく、より人口に膾炙したフランコ・アルファーノ補筆版のようなので、たぶん演出も保守的正統的なものだろうと思いつつも、興味津々で行ってまいりました


○キャスト等:
指揮 アントニオ・パッパーノ
演出 アンドレイ・セルバン
再演演出 ジャック・ファーネス

トゥーランドット(S)  アンナ・ピロッツィ
カラフ(T)  ヨンフン・リー
リュー(S)  マサバネ・セシリア・ラングワナシャ
ティムール(B)  ヴィタリー・コワリョフ
ピン(Br)  ハンソン・ユ
パン(T)  アレッド・ホール
ポン(T)  マイケル・ギブソン
アルトゥム皇帝(T)  アレクサンダー・クラベッツ
官吏(Br)  ブレイズ・マラバ

ロイヤル・オペラ・ハウス合唱団
ロイヤル・オペラ・ハウス管弦楽団


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○感想:
非常に良かったと思います
何といってもこのプロダクションが良いですね評価が高く、オリジナルが上演された1984年から今日まで続いているのもわかります。個人的には、DVDで見たゼッフィレッリのMET版よりこちらの方が好みかもしれません
赤と白を基調にしたデザインで、衣装や小道具、大道具も日本人から見て奇異な感じはせず、それでいて古臭い感じもなし。ダンサーの踊りにも太極拳の動きが取り入れられているそうで、随所に東洋文化へのリスペクトが感じられるものでした

演出面では、お話の解釈そのものについては、特に斬新な何かを含むものでなく、予想どおり、保守的正統的なものだったと思います。音楽についても、前述のように本公演は、二期会のトゥーランドットで見たようなルチアーノ・ペリノ補筆版でなく、一般的なフランコ・アルファーノ補筆版。
どっちがあるべき姿か、プッチーニの意図に沿ったものか、はともかく個人的に落ち着きが良いのはやっぱりこちらでした😅

面白かったのは、シアトリカルな要素がふんだんに盛り込まれていたこと。舞台を囲むように三層の妓楼のようなものが組まれ、そこにコロ(合唱)=民衆が配置されており、コロは舞台で起こっていることを見守りつつ、自ら歌い、演技をする形で、行ってみれば劇中劇に参加する趣向。

また、登場人物たちは、民衆をはじめ、みな基本仮面を被っており、最初から最後まで着けていないのは、カラフ、リュー、ティムール、アルトゥム皇帝だけで、ピンパンポンは2幕冒頭で故郷に帰りたいと嘆く場面だけ素顔を晒し、トゥーランドットも謎解きの場面では外すものの、以降は3幕終盤でカラフにマスクを取られるまでは着けっぱなし。愛を知らない冷酷な姫と、その姫を恐れながら本音を言えずに暮らす人々(官吏たちを含む)を表しているようでなかなか効果的でした

キャストも非常にレベルの高いものでした
まずはタイトルロールのアンナ・ピロッツィ。決して重たい声ではないのですが、シャープで硬質な歌声でトゥーランドットを見事に表現していました。謎を解かれて狼狽し、父帝に約束を保護にするよう訴える場面での落差も良かったと思います。ドラティックな役を得意とする方のようで、これからもヴェルディ作品等で目にする機会が多いと思います

ついでカラフのヨンフン・リー。アジア人としてもテノールとしても大柄な方で、その分声量は十分でトゥーランドットにも対抗できていましたちょっと力任せのところはありましたが(^^;;相当、喉が強いんでしょうね、最後までテンションを保っていました😅

今日最大の掘り出し物(失礼)は、リューを演じたマサバネ・セシリア・ラングワナシャ。南アフリカ市出身でロイヤル・オペラ・ハウスの育成プログラムを修了した方のようですが、とにかく声が素晴らしいです自然に力みなくどこまでも強く高く伸びる声で、トゥーランドットの歌声を密度で上回っていました😅カーテンコールでも誰よりも大きな歓声を受けていましたこれからが楽しみな若手ソプラノだと思います

このほかでは、ピンのハンソン・ユが滑らかで良く響くバリトンで印象に残りましたが、パン、ポンなど他のキャストも皆素晴らしかったです

ということで、今日はロイヤル・オペラ・ハウスのプロダクションやキャストのレベルの高さを実感できました演出面でも奇を衒ったところはないので、初心者にはわかりやすくて良いかも😅
途中休憩時間中にはMET LIVE VIEWING同様、スタッフやキャストへのインタビュー、舞台裏の紹介などもあるので、こちらも興味深く視聴しました。METと合わせて、ROHの方も今後できるだけフォローして行きたいと思った次第です


○評価:☆☆☆☆