○2022年7月8日(金)    松竹ブロードウェイ・シネマ「ザ・ウィローズ」(The Wind In The Willows) 於:東劇

今日は劇場を出てから衝撃的なニュースに接し、何もやる気が出なかったのですが、なんとか気を取り直してのエントリーです。


981A4C20-E525-435E-BBED-889D6CE25A47去年10月に見た「パリのアメリカ人」以来の松竹ブロードウェイ・シネマは、2017年にウェスト・エンドのパラディアム劇場で上演された「ザ・ウィローズ」(原題は、The Wind In The Willows)をフィルムに収めたもの。1908年に書かれたケネス・グレアムが発表した児童文学作品に基づくミュージカルだそうです。この小説は日本では「たのしい川べ」というタイトルで有名ですが、残念ながら読んだことはありませんでした😅

有名な作品だけに何度もテレビや映画、舞台の素材になっているようですが、本作はファミリー向け?ながら、脚本を「ダウントン・アビー」などを手がけたジュリアン・フェローズが、楽曲を舞台版「メリー・ポピンズ」で追加曲等を手がけたジョージ・スタイルズとアンソニー・ドリューが担当するなど、スタッフ、キャストとも豪華な布陣で臨んだ本格的ミュージカルとのこと。

予告映像を見る限り、屈託なく楽しめる愉快な万人向けミュージカルのようですが、一筋縄でいかないのがイギリス流。果たしてどんなミュージカルなのか、公開初日に行って参りました



 

○キャスト
Mr.Toad(ひきがえる)...Rufus Hound
Mole(モグラ)...Craig Mather
Rattie(かわねずみ)...Simon Lipkin
Badger(アナグマ)...Gary Wilmot
Chief Weasel(イタチ)...Neil McDarmott
Mrs. Otter(カワウソのお母さん)...Dennis Welch
Lesser Weasel(オコジョ)...Joshua Gannon
Portia(Mr.Otterの娘)...Emile du Lesley
etc.

○感想
いやー、なかなか面白かったです。
お話としては、原作をほぼ踏襲しているようで、
「冬眠から目覚めた後の春の大掃除に飽き飽きしたモグラのMoleは、川辺で人懐っこいカワネズミRattyやカワウソのMrs.Otterやその娘Portiaと友人になり、生まれて初めての川遊びに興じる。同じく川辺のお屋敷の主、ひきがえるのMr.ToadはRattyとは幼馴染だが金持ちで我儘なMr.Toadに我慢ならないところもある。社交的なMr.Toadは、RattyとOtterを誘って最近ハマっている馬車での旅に出るが...」という感じで、この後はスピード狂のMr.Toadが引き起こすドタバタと、アナグマのBadgerの助けを借りて、Toadのお屋敷を不法占拠したイタチ・オコジョ軍団との戦い?がコミカルに描かれます。
登場人物はほぼ動物のみですが、髪や服の色、最低限のメーキャップのみで最低限の扮装。表情(Facial Expression)が損なわれることはありませんでした。

大きなテーマとしては、人(動物)は誰しも色んな欠点があるが、友だちなら少々のところは許して助けあわなきゃね、という非常に大らかな感じ(笑)しかし、そこはイギリス流、モグラは下層、川ネズミとアナグマは中流、ひきがえるは上流階級というようにイギリスの階級社会を反映しているらしいです😅

そう思うとMr.Toadの人物(動物)造型、基本的には善人で悪気はないが、我儘で傍若無人、鼻につく金持ち然とした振る舞い、スピード狂(車とレースが大好き)と言った部分は非常に面白かったですし、Moleが長いことToadのお屋敷に滞在した後、久しぶりに地下の我が家に戻った際、こここそが自分がいるべき場所だと歌うところなども興味深かったです

この他、ツバメやハリネズミ、ウサギや馬など様々な動物が出てきますが、それぞれ動物の生態を踏まえた人格が付与されており、例えば、ハリネズミの一家は夜に道路を渡ろうとして、行き来する車に用心して中々決断できないうちに夜が空けそうになってしまい、結局日のべしてしまったりするところが笑えました。

お話自体も面白いのですが、楽曲もポップでキャッチーなものが多く、必ずしもミュージカル・アクターばかりでなく、ストレート・プレイ中心の役者さんも結構いると思うのですが、キャストの方々全員お上手で感心しました。
楽曲はYoutubeで聴くことができますが、Spring, Messing About in a Boat, To Be A Woman, A Place To Come Back To,The Wassailing Mice,The Greatest Great Escapeなどがキャッチーで耳に残りました。

後は何と言っても舞台美術が素晴らしく、冒頭の川遊びや星空のシーンはうっとりしてしまいますし、イギリスの川辺の美しい自然を想起させますToadのお屋敷のセットなども豪華でお金がかかっている感じ(笑) この辺は日本のファミミュとは大部違います💦

ということで中々良くできたミュージカル。Broadwayに進出する様な派手さはないかもしれませんが、予想どおり広い客層に楽しんで貰える良質の作品でした。ところが、平日午前中ではありますが、公開初日の初回上映だというのに劇場内は私を含めてたった二人のみ 松竹のHPではかなり力が入っていて、たくさん関連のエントリーが上がっているのですが... いい作品なのに勿体無い限りです。是非、ミュージカル好き、イギリス好きでご用とお急ぎでない方は観劇されてはいかがかと思います。お薦めです


○評価: ☆☆☆☆