西加奈子さんの初のノンフィクションを読みました。
2021年のコロナ禍に、
家族3人で滞在していたカナダで乳がんがわかり、
バンクーバーでの告知から治療までが綴ってあります。
罹患したのは、トリプルネガティブというタイプの乳がんで、
アンジェリーナ・ジョリーのようにBRCA2の遺伝子変異もあるので、両側の乳房を全摘したそうです。
手術や抗がん剤、放射線の治療、
治療中のコロナ感染、
小さな我が子の急病など
凹んだこともあったようですが、
現地の仲間のサポートも受けて、
強い気持ちで向き合ったことがわかります。
同じ乳がんを経験したものとして印象に残ったのは、
日本とカナダの医療の違い。
カナダでは、体に何か異常があっても直接、婦人科や皮膚科などに行けなくて、
まず、ファミリードクターという総合医にかかり、
それから専門の医師の予約を取ってもらうシステム。
なかなか専門医の診察にたどり着けずに、もどかしいそう...
また、入院手術も
私は乳がんの全摘手術は10日間入院させてもらいました。
術後も、患部にドレーンという管を付けて、そこから出る排液が少なくなるまで、医師や看護師さんや慎重にチェックしてもらってから、退院となりましたが、
西さんは、日帰りで両側の乳房を手術したうえ、
ドレーンのケアもZOOMで説明を受けて、自分でやるという大胆さでした。
術後も、痛み止めを飲みつつ、とうじつから体を動かすように指導されます。
日帰りでの手術は、術後の傷や合併症を思うと、かなり怖い。。
そして、カナダの病院は事務手続きで、適当なところがあって、
がんセンターからの連絡が何日待ってもこなかったり、急な変更があったり...
そのトラブルに抗議したくても言葉の問題もあって通じなく、、、
日本にいたら、こんなストレスもなかったな、と何度も思ったそうです。
カナダは国民皆保険制度で、自己負担はなし、など良い点も書かれていますが、
海外で治療を受ける難しさがわかり、
日本の医療は、とても手厚く恵まれていると痛感しました。
共感できた言葉もあり、
友人たちから治療について、こう言われます。
「自分のがんのことは、自分で調べて、医者まかせにしないこと。
少しでも治療に対して疑問があったら、遠慮なんていらないから、どんどん聞くの」
「自分の身は、自分で守るの。」
「あなたの体のボスは、あなたやねんから。」
私も、ある日突然、乳がん患者になり、
わかないことだらけで、自分でかなり調べて、医師にも質問しました。
全摘か、部分切除か、
再建するか、しないか、の選択も、
最後に決めるのは自分。
治療に積極的に参加して
自分の身は自分で守らないと、です。
きっと他の病気でもそうですね。
西加奈子さんが治療を通して、
どんな身体になっても、私は私である!と認識したことには勇気づけられるし、
日本とカナダの文化や意識の違いも興味深かったです。
闘病のことがメインだけど、
登場するカナダ人の言葉が、関西弁で訳されていて、湿っぽくなく読めました。
オマケ
先日、用事があり、久しぶりに通りかかった国立競技場の紅葉
千駄ヶ谷駅前のイチョウ並木
今日も拙い感想文をお読み頂き、
ありがとうございます。