『あの、話題の…。』

くらいのテンションで観たのです。

『開始5分すぎてるけど、大丈夫っしょ!』

くらいの意識で観たのです。

でもそれが、
大きな
間違いでした。



悪人 シナリオ版 (朝日文庫)
吉田 修一,李相日
朝日新聞出版

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登場人物が、
その場面ひとつひとつが、

気持ち悪いほどに
普通。

普通すぎて、怖くなるほど。

多分、
普通の映画より少ないように思えるセリフたち。

沈黙のあるシーン。

そして、

雨。

信号。

車。

自転車。

国道。

海。

長崎。

山。

佐賀。

灯台。

挙げたらキリがないキーワード。

『誰かを悪人にしよう』
としても、
それを打ち消す言動が必ずどこかに入っているのです。

殺された女の子だとしても、
残されたメールや両親の人柄が違うと示し、

蹴りだした男は祐一がいることで社会的に許され、

彼を殺して悪人になってもよかった父親は、
母親の『帰ってきてね』の言葉で留まり、

『出会い系にハマる娘を育てたおまえが悪い』となじられた被害者母親は、
被害者父親から『悪くなかった』と言われている。

『祐一を捨てた母親が悪い』
とすれば『祐一は私の子』と祖母が反論し、

『出会い系殺人犯の祖母』と言われたマスコミがたかっても、
『ばあさんは悪くない』とバスの運転手から言われる。

じゃあ、一緒に逃げた光代が悪いのか?
それは、祐一が首を絞めることで否定される。
(愛ゆえの優しさ、かどうか若干迷うことは迷う。)

じゃあ、やっぱり祐一が…。
と思いきや、

結局それは、
ラスト付近の花束が最終的に打ち消している。

『…悪人なんですよね。』

悪い奴と思っていたら、
花束を置いていくはずです。
(でも置いてしまうと、悪人だと認めてしまうことになる)

本当、おバカなことに、
冒頭をしっかりと観ていないのでなんとも言えないのですが。


印象としては、
映画冒頭の祐一は、
ネットにハマり、薄暗い携帯画面に見入る暗い雰囲気。

ラストの祐一は、
夕日の沈む
(かつて、先が見えなくて不安だと言っていた)海を
見つめる儚い雰囲気。

何を意味するんでしょうねぇ。

裏、表。
はたまた、角度。




…。
くだくだいうのはここまでにしましょう。
上から目線でいろいろ言える立場でなし、ま~ったく偉くもないし。
エンドロールが終わって、
明りがついたら、

会場の雰囲気がどんよりしていますから、
それも楽しむといいかもしれませんよ。

あと、
ジュースとか、
ポップコーンとか、
不思議とのどが通りませんから。

ホットドックとか、
ポテトとか、
もったいないことになりますから。

そんでもって、
映画館を出るまで、
多分、無言になりますから。

帰りの車や電車のなかで、
語り合うのがいいでしょうね。

私もそうしながら、
一緒に見に行ったお方と
あ~だ、こ~だ話をしましたから。

でもね、
はっきりとおっしゃっていましたよ、
結論を。

『悪人は、この中にはいない。これは、( )を批判した映画だ』

なるほどな。
一理ある。




以上。
山ほどキーワードが詰まっているこの作品。
『多分、見落としているものがたくさんある』とお連れの方が漏らしておりました。
私も、そう思います。
意味深いセリフと、メッセージのこめられたシーンたち。
何度か見ないと、本当の答えは出せないように思いました。
久石譲の作る奇妙な印象を受けたBGMも、
よく考えたら本当に奇妙だったのかよくわからなくなったので、

勇気を振り絞って、
もう一回、観ようかな。

※勝手な解釈でした。一個人の意見なので、大目に見ていただけると助かります。