ビリーとヘレン in 新神戸オリエンタル劇場

「ダンスアクター舘形比呂一がストレートプレイに挑戦」
というわけで、かねてから噂に聞いていた舘様も観にいって来ました。共演の元タカラジェンヌ絵麻緒ゆうさん共々初見。客層は30代半ばのお姉さまが多く、優雅な気分。

ストーリー:舞台はアイルランドの小さな漁師町。幼い頃両親に先立たれ、尚且つ体の不自由な“世界一不幸な”少年ビリーは、二人の老婆ケイトとエイリーンに育てられてきた。二人は、本を読むか牛を眺めるかしかしていないビリーのことが気が気でたまらない。そんな心配もよそに、町で一番の美人で一番暴力的な少女へレンに思いを寄せるビリー。ある日、ヘレンが弟バートレイと一緒に隣島で行われている映画の撮影現場へ行く計画を密かに立てていると耳にする。愛するヘレンのそばにいたくて、ビリーは“自分をゆっくりと蝕んでゆく病を押しながら”も付いて行こうと決心し・・・・。

舞台セットはいかにも流木で作られたような感じで好きだなと、案の定、舞台美術は加藤ちかさん。いいねぇ。脚本も、イギリスの松尾スズキといわれるだけあって、シュールな雰囲気醸し出してたし。

さて、今回が初見の舘様。出てきたときから目を惹きました。いけません。他の役者が大事なつかみの台詞をしゃべっていたのに、目は彼に釘付けになってしまいました。さすがダンスアクターだけあって、時折見せた舞踏が何ともいえない。言葉で表現する以上にビリーの交錯している内面が出てきて、どちらかといえばずっとやっててほしかったです。なんだかんだでビリーはずる賢いとこある風なので、台詞以上の効果がありました。あと、若いゆえの単純な行動もかわいい。ヘレンにふられた事で海に飛び込もうとするなんてね。
一方、絵麻緒ゆうさん演じるヘレンですが、「あばずれ」といわれるに十分な自由奔放ぶり。ラストに見せたビリーへ愛情は、かわいらしかった。この話、主人公2人の掛け合いはあまりないので、序盤から「ビリーは本当にヘレンが好きなの?」と疑問だったのですが、大丈夫。しっかり愛情ありました。最後の最後はきちんとやりますな~。少し雰囲気硬かったけど、ありだなと思いました。もし斉藤由貴さんが演っていたら、もっと漁師的気質の強い、野蛮なかんじだったかもしれない。

しかし、この舞台は恐らく「ビリーとヘレンを取り巻く人たち」の話だったように感じたのは私だけではないはず。老婆2人も、くだらない情報屋ジョニー・パティーンやその母親も、とにかく面白い。ベテランの“間”というものは凄いですね。ただもう、どの台詞も力は入ってない感じが笑えるんだけど、その裏にある深い愛情と悲しみを感じずにはいられませんでした。どこかで「泣けなかったね」と言っていたお姉さま方のいたけど、私は泣きましたよ。老婆2人と一緒になってビリーを心配しました。逆に、近藤芳正さん演じるバートレイ少年には意味もなく笑いましたけどね。卵、たまご。よく許したなぁ~、新神戸オリエンタル劇場!!

というわけで、聖書に始まり聖書に終わる終始一貫性もあいまって、わかりやすい話でした。感動半減と、再見は控えたこともあって、かなり表面的なかんじですが、もしよければ東京公演でも見に行かれてはいかがでしょうか?

追記 個人的には舘形さんの舞踏をぜひ観たい。舞台上の存在感は、私が一番やりたかった芝居に近い。今回は、そういう意味で収穫の大きかった。ダンスじゃなくて、身体表現をとりいれた舞台、うん、やろう。いつか、やってみせるわ。