昨日でも 明日でもない
1秒前でも 1秒先でもない
今という今は
時計の中を探しても見当たらなかった
しかし、
バスが轍を擦って通り過ぎた後の
道路の静けさの中に
夕闇に鳴くコオロギが羽を休ませる
ほんの束の間の中に
鳴り止まない耳鳴りと
その真裏にある静寂との境目に
そういった感覚の中に今はあった
時間の枠の内側ではなく
ただ静謐の一点に向けた感覚の中に
今という今はあった
それは、いつでも、誰でも
暖かく迎え入れてくれる
私はその今の隙間に
当たり前の様に入り込んでいた猫を見て
悲しみも喜びも引きずらない
この子の潔さの訳を心底納得した