『殺戮にいたる病』(ネタバレなし)
今回は我孫子武丸の代表作である『殺戮にいたる病』を読みました。
あらすじ
蒲生稔は猟奇的殺人を重ねるシリアルキラーであった。
彼は遺体の両胸と子宮を刃物で切り取り、持ち帰っていた。
恐ろしい殺人を繰り返す犯人と、犯人を追う元警官、犯人の家族、3つの視点から事件を追う。
みどころ①
みどころは何といっても「叙述トリック」
叙述トリックといえば、時間や場所、人物などを混乱させるという方法がありますが、今回使われているのは「人物のトリック」です。
第1章の時点から、人物それぞれの設定が、読者のミスリードを誘っています。
人物のトリックが使われていると分かっていても、真実に辿り着くことができる人は多くないでしょう。
最後のページを読むことで、トリックは完成します。
思わず声が出るほどの驚きが待っています。
みどころ②
タイトルにもある通り、蒲生は「殺戮にいたる病」を持っています。
到底理解できるようなものではありませんが、猟奇的な殺人を繰り返す者の考えや心情が細かく書かれているため、よりリアルになっています。
途中で「タナトス・コンプレックス(死への願望、本能)」についても書かれており、蒲生の殺人がただの性欲によるものではないということが分かります。
「セックスとは、殺人の寓意にすぎない」と言うほど、蒲生にとって「死」は「愛」に近いものであったと考えられます。
理由もなく行われる単純な犯行ではないからこそ、冒頭からページをめくる手が止まらなくなると思います。
最後に
最初から最後まで一気に読みたくなるほどとても面白い作品でした。
ただ、犯行の様子が細かく書かれているため、性的な描写やグロテスクな描写が多いです。
苦手な方は避けた方がいいかもしれません。
多少犯行の部分を避けて読んだとしても、ラストシーンの衝撃は味わえると思うので、気になる方はチャレンジしてみてもいいと思います。