韓国で一番仲の良い友人Sが急にイギリスへ旅立つことになった。来週の12日にまずドイツのベルリンに入ってドイツ人の友人に会い、14日にロンドン入りするらしい。


突然のSの報告に私はとても驚いたし、ショックであった。今までに友人との別れは何度も経験してきたが、やはり何度経験しても慣れるものではない、辛いものである。それに特にSは、数少ない韓国人の友人の中でも一番親しい友だったから…。


Sがイギリス行きを決めたのも何と一週間前だったというから驚きである。S曰く、彼女は受身の人間なんだそうだ。例えば、私が日本にいて「S、日本においで」と言ったら、二つ返事で日本に飛んで行くだろうとのとのこと。今回のイギリス行きも、先週の金曜日にイギリスの大学院時代のイギリス人の友人と電話をしていた時に、その友人から「ロンドンにあるコンサルティング会社が人材を募集しているのだけど、あなた働いてみない?」と言われたので、すぐさまオッケーしたらしい。それから、Sは早速履歴書を作成して送ったところ、会社側が「では面接を」と言ってきたので、航空券を購入したという。


何とも唐突な…と思えなくもないが、私がSでもそうしていたかもと思った。Sは、約2年半前にイギリスから韓国に帰国してから、ずっと将来のことで悩んでいた。自分は韓国社会・企業とは合わない人間だと思っていた彼女は、この2年間半職なし、いわゆるプー太郎であった。しかし、働かなくても、賢く、聡明な頭脳の持ち主のSは、株で私財を増やしていた。


Sにはいろんな夢(計画)があった。ニューヨークで映画の勉強をすること、ニューヨークでMBAを取得すること、ベトナムで不動産ビジネスを始めること、韓国でフランチャイズのレストランをオープンすること、韓国に家を買うこと、日本で日本語を習うこと、ベルリンに住むこと、パナマで事業を始めること、香港大学の大学院で建築について学ぶこと、韓国でホテルビジネスを始めることなど、挙げたらキリがない。しかし、彼女はどれか1つに絞ることもできず、いつも悶々としていた。実際、韓国に自分の家を購入しようとして、数軒もの家を見てまわったらしいが、これといった家には出会わなかったそうだ。つい最近も、購入覚悟で家を見に行ったのだが、契約段階で大家さんが提示額の2倍の額を要求してきたので諦めたらしい。Sが株だけで財産を増やしているのは知っていたが、家を現金で買えちゃうくらいのお金があるというのを知り、正直たまげた。それも、ソウル市内の一軒家である。ちなみに、Sはまだ28歳…。


結局、家も買えなかったし、今日本に行く気もしないし、大学院の方は申し込みを締め切っちゃったし、これからどうしようとと悩んでいた時に、イギリスの友人から就職の話を持ち込まれ、こうなったらもうイギリスに行くしかないと思ったそうだ。最近イギリスがマイブームの私としては、とてもウラヤマシイ話である。といっても、今の私にイギリスで生活する心の準備はないが。


昨日はSが家に来ることになっていたのだが、急用のため来れなくなってしまった。Sが家に来れなくなったことを私は旦那に伝えなかったので、てっきりSが家に来ているものだと思った旦那は、会社の帰りにケーキとスパークリングワインを買ってきた。旦那が帰宅した時には、もう既に午後8時をまわっていたのだが、一応私は、SにSMSを送った。『P(旦那)がケーキとワインを買ってきたのだけど、一緒に食べられなくて残念だわ』と。すると、Sから「今から行く」と電話が入った。Sの自宅からうちまではバスとタクシーを乗り継いで2時間はかかる。結局、Sは10時半にうちにやって来た。そして、Sが帰っていったのは朝の10時。私たちは、オールナイトで11時間半もぶっ通しで話し続けていたことになる。何とも名残惜しい別れであった。


とにかく、Sは来週韓国を発つ。離れ離れになってしまうのはとても寂しいが、Sの無事と発展を祈っている。