翌朝、私たちはうちの近所にある大学病院へ向かった。


消化器内科での診察の結果、2、3日入院して様子を見た方がいいとのこと。会社を気にして、答えを渋っていた旦那をよそに「はい、入院します!」と、私が代わりに答えた。旦那は、ずっと「でも、会社を休むのはマズイし、休みたくないし、何といってもお金が掛かるじゃないか…」とボソボソ言っていたが、私は「入院している間に皮膚科の方でも診てもらって、ゆっくり休んだらいいじゃない。それにあなたは今まで入院したことがないんでしょう。一度、入院生活を経験してみたら?お金のことは心配しないで。あなたの体の方が大事なんだから!」と啖呵を切った。


皮膚科にかかるというのは、彼是5年ほど前に、旦那の体中に突然異様な湿疹が出始めたのである。それ以来、その湿疹は消えることがなく、ただ増えたり減ったり、薄くなったり濃くなったりするだけである。デンマークにいた時に、病院にかかったことはあるのだが、「取り合えず、湿疹だからこの軟膏を塗りなさい」と軟膏を処方されただけであった。


それともう1つ、旦那のわきの下にシコリがあるのだ。それも、私が日本にいる間にできたらしい。痛いというから、そんなには心配していないのだが、やはりリンパ腺があるわきの下というのが気に掛かる。それでこの際、その湿疹とシコリを一緒に診てもらおうと思ったのだ。はっきりいって、腸のことよりもそのシコリの方が私としては心配であった。


とにかく、私の鶴の一声で旦那の入院は決定した。


その時、午後1時。入院は午後3時半から5時の間にしてくれというので、私は昨日の晩から何も食べていないヘロヘロの旦那を引き連れて、本来予定していた『韓国ビザの延長申請』をしに、仁川(インチョン)にある出入国管理事務所へと向かった。


仁川港にある出入国管理事務所まではタクシー、電車、タクシーと乗り継いで約1時間かかった。(遠いねん)相変わらず、中国人が多い。申請に来た外国人の70%は中国人といったところだ。その為、中国人専用受付窓口が作られている。


待つこと40分。やっと私たちの番が回ってきた。しかし!担当者のおじさんの仕事が何といっても遅い!!それに、せっかく私が分かり易いように、旦那と私の書類や収入印紙を別々に別けて渡してあげたのに、それをごちゃ混ぜにしちゃうし。さっきから旦那も申請そっちのけで、トイレに行ったり来たりしているし、入院の時間は迫ってくるしで、私はいつも以上にその担当者のトロい仕事ぶりにイライラした。


あまりにもトロいので、私が「あのその収入印紙はここに貼るんじゃないんですか?それは私の書類です、主人の書類はこっちです。それは、ここに書いてありますよ。」などと、口出しをしていた。終いには、私たちが最初にビザを取得する時に提出した婚姻書類一式がないと言い出すではないか。私は、「そんなはずはないから、ちゃんと探してくれ」と言った。結局、その書類は5分くらい探してやっと見つかったのだが、見つかった時の彼の一言は、「もしかしてこれ?まさか、英語の書類だとは思わなかったよ」だって。毎日、同じ業務を行っているだろうに、どうしてこんなにも仕事があやふやなの?トロいの?と不思議に思った。途中何度も、『代わりに私が処理しましょうか?』という言葉が口をついて出そうになった。


何とか無事にビザ延長の申請を終えて、私たちは病院に舞い戻ってきた。時は、午後4時半を回っていた。


それから3日間、旦那は入院した。旦那の病室は3人部屋で、60代と20代の男性と同室であり、その中で一番病状の軽かった旦那は肩身が狭かったようだ。私は毎日面会に行き、夜9時まで旦那と話したり、本を読んだり、看護用ベッドで昼寝をしたり、病院食堂で食事をしたりして、過ごした。ちなみに、旦那は3日間禁食で、点滴の打ちっぱなしであった。


さて、下痢の原因は急性腸炎であった。予想通りの結果。退院した翌日、旦那が上司に挨拶をしに行ったら、開口一番「韓国人は急性腸炎くらいでは入院しないんだ!」と言われたそうだ。それはそうかもしれないけれど、病人に向かって別に言わなくてもいいじゃないのねぇ…。人に入院しろと言っておきながら、多分、私でも入院しないと思うけどね。


湿疹は慢性湿疹であり、発疹したら軟膏を塗るくらいで、特に治療法はないとのことであった。アレルゲンは何千種とあり、調べるのはかなり難しいし、時間もお金も掛かるとのこと。また、アレルゲンが一種類の人はほとんどおらず、多くの人が数種の複合アレルゲンを持っていることのことであった。よって、旦那はこれから一生、その湿疹と上手く付き合っていくしかないということが判明した。


シコリについては、現在、薬を飲んで様子を見ている段階で、会社を休めない旦那の代わりに、明日私が病院に行き、シコリの症状を説明しに行かなければならない。


入院前は「お金のことは心配しないで」と言い切った私だが、お金のことが心配なのは事実であった。ちなみに、今回掛かった医療費は約4万円であった…(ノ゚ο゚)ノ(貧乏人にはきつい出費だったけれど、健康はお金には代えられないし…)


<追伸>相変わらず、旦那は冴えない顔をしていますが、お腹の調子はよくなったようです。昨日のブログを読んで心配して下さった皆様、ご心配ありがとうございましたニコニコ