運命 | 岩に染み入る 蝉のーと

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蝉丸のつれづれ日記



団長ですサル

今日はライトダウンでした。










いつもこの日になると思い出します。

この日になるとなんだか四肢にまとわりつき、心地よく僕を包み込む事。

僕は高校を卒業して、アメリカに渡った。

コーヒーの匂いが霧のように立ち込める街に僕はいた。

そこで、出会った人がいる。

同じ大学内で出会ったA君とB君(当然便宜上だ)

A君は地元の人、つまりアメリカ人だ。
B君は僕と同じ日本人、年齢も僕に近かった。

なんとなく

そう

なんとなく僕も含めた3人はいつも一緒だった。

寮の部屋が近いこともあった。

授業が終われば、必ず誰かの部屋に集まって、たわいもない話。酒を挟むときもある。

僕が最初に帰国した。

Aは大学に残り、Bも暫くアメリカに残ることとなった。

とりわけ仲がよかった訳でもない。

でも、当然のように僕のアメリカの風景には彼らがいる。

帰国後もたまに連絡をとるぐらいだ。



何年か過ぎた。

Bからメールが来た。

一行だけだった。

「あの日、Aはツインタワーにいたみたいだ」

あの日、世界が大きく変わった9月11日から僕らはAと会っていない。

そして

5年前の3月11日。

Bは東北にいた。

そこまではわかっている。

そこまでは。

鉛色の津波の映像を見る度に

Bはこの映像にいるのか

いや、この悪魔の舌のような生き物から彼は逃げたに違いない。

と、自分に言い聞かせている。



人は。

生きている中で

様々な人とすれ違う。

その人々には

生涯のパートナー

もいれば

袖、触れるのみの人もいる。

ただ、人は人とのすれ違いの中で

笑ったり、泣いたり、傷つけあったりしながら成長していく生き物であると思う。

AとB。

彼らは僕に沢山の事を教えてくれた。

だから、僕はここにいるのだと思う。


Bがいた場所に行った事がある。

3月11日から1ヶ月ほどたってからだ。

未だに瓦礫が天地を埋めつくし、津波がのこした潮の匂いが鼻を突き刺してくる。

想像できない

未来を見ることのできない

その風景。

Bは何を見たのか。

今となってはわからない。


Aの時は、怒りが怒りを産み出した。

Bの時は、悲しみがより深い悲しみに突き落とした。

僕がアメリカに居た痕跡の半分以上 が彼らであった。


AとB

今でも、ひょこりと連絡が来そうな気がする。

生きている。

そう思いたい。



彼らの分まで

彼らの想いを背負って


そんなかっこいい考えは僕にはない。

ただ、

彼らに胸ぐらを捕まれて

「そんな風な生き方ならなら俺と変われ!!」

と言われない生き方を僕は選んでいく。

運命。

そう。

彼らと出会ったのが「運命」ならば

彼らの「命」を僕が「運ぶ」事ができるのだ。


彼らと見たあの異国の空を忘れずに

彼らと語り合ったあの夢の日々をこの胸に。