夜の海 | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

姑のお誕生日に一緒に食事をしました。

去年は世間がわさわさしてお祝いも省略したので

おめでとうの会食は実に2年ぶり。

姑もお気に入りのいつものお店を予約しました。

 

そもそも私たちも外食自体が1年以上ご無沙汰。

料理をすることはどちらかというと好きなのだけ

れども、久しぶりの作ってもらうごはん、楽しみ!

横浜町中に出向くのも引っ越し以来初めて。

当日は早めに出かけて

海沿いのお散歩をしようと思っていたのに、

私のお腹の調子が思わしくなくて、

結局時間ぎりぎりまで自宅で大人しくすることに。

なんとか根性で体調を復活させました。

 

久しぶりでもお店の皆さんは気持ちよく

迎えてくださって、いいお祝いになりました。

多分、姑のお誕生日を一緒に過ごすのは

今年が最後。

なぜなら姑と義兄一家の同居が決まったから。

姑はこの春に遠い北に引っ越しの運びです。

 

横浜の自宅も売却が決まったので、

去年の大晦日は夫にとっても実家での

最後の年越しとなりました。

18歳で家を出てひとり暮らしを始めた夫ですら

実家がなくなるのは寂しいものでしょう。

まして50年近くを過ごした姑はなおさら。

 

最近の姑は少し元気がありませんでした。

常日頃は前向きで人当たりもよく、

お友達も多い明るい性格の人。

だけれどもこの2年余りのコロナ騒動で、

外出も減ったしご近所さんとの行き来も

お互いに遠慮がちになっていって。

ひとり暮らしの日常が少しずつ息苦しく、

年齢も相まって今までになく気弱な発言も

増えていました。

 

そんなところへ前々から話に出ていた

義兄との同居が具体的に決まり。

お試しということでここ数年数か月ずつ

一緒に暮らしてみる体験を経て、

いよいよ引っ越しの準備に取り掛かる

段階に入りました。

 

姑にとっては30代から長く暮らした

馴染みも思い出もたくさんある土地と家。

自身の若い頃から住み慣れて、

子供たちを育て、夫の単身赴任中には

しっかりと家庭を守り。

子供たちが大きくなると免許を取って

働きに出て、お付き合いも多く、

華やかに楽しく暮らした長い年月。

でもここ数年はひとり暮らしになって、

娘に先立たれてがったりと段がついた

ように老け込みました。

 

お喋りの好きな人なので、この人との

接触の極端に減った日常が辛そうでした。

電話もいつにも増して長くなって、

年も年なので心配していたところへ

今回の同居話。

馴染みの場所を離れることへの抵抗と、

年齢からくる引っ越しへの億劫さから

転居を決意できずにいたけれど。

お試し同居をしてみれば義兄と優しい

お嫁さんに囲まれて、会話のある暮らしの

ありがたさがコロナのせいで一層切実に

感じられたようで、ついに決心がついた次第。

 

決心はしても揺れる気持ち。

無理もありませんね。

本人は引っ越すことのメリットもきちんと

納得できているのだけれど、

新しい環境に根を下ろすことへの不安と、

やっぱり家を引き払う億劫さが大きそう。

具体的な作業は息子たちがすると

分かってはいても、抵抗はまだ根強く。

「引っ越しの前にぽっくりいけたらな」

なんて常日頃の姑には全く

似合わない発言があったりします。

聞いていると切ないけれど、

気持ちは分からなくもない。

でもおかあさん、北にも新しく楽しい

暮らしが待ってますよ。

おかあさんのことだからすぐにお友達も

できると思うし、なにより大好きなお魚の

美味しいところだから、

得意の料理の腕をガンガン発揮して、

まだまだ現役でいてください。

 

シェフの心づくしのお料理と、

ホールスタッフさんたちの優しい接客のお陰で

「最近食欲がなくて……」としょんぼりしていた

姑も私たちと同じ分量のお食事をぺろり。

美味しいご飯の威力はスゴイ。

楽しい時間を作ってもらえて、

終始笑顔で過ごすことができました。

この状況の飲食業は神経も使って大変だろうと

私もアルバイトを始めてますます感じるように

なりましたが、さすがの良店の腕前でした。

お店のみなさまに大感謝です、ありがたい。

 

お店を出て姑をタクシーで見送ってから、

夫とふたりで少し夜の散歩をしました。

横浜に住んでいた時のお馴染みコース。

1年以上たっていても昨日の続きのようで

不思議な気持ちになります。

お店から少し歩けば、海。

こんなに近くに海のあった暮らしは懐かしい。

一昨年までの私、羨ましいぞ。

 

夜の海沿いは人気がほとんどなくて、

風がなくて歩きやすいのにとても静か。

引っ越し直後にできた新しい橋を渡ってみたり

いつもの公園をぶらぶらしてみたり。

夜になってしまったので青い海が見られない

のは残念だったけれど、波の音がしていて

向こう岸の明かりがキレイで。

眠気を誘われるようなそっと撫でられるような。

やっぱり海を見るのが大好き、落ち着く。

 

姑が実家を離れたら訪れる機会は減りそうで、

近いとはいえ横浜が遠くなりそうな気がしました。

冷たい空気の中で、引っ越しの日とはまた違った

第二のお別れをしたような気持ちです。

 


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