本とのお別れ | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

今のマンションに住んでから気づけば早13年。

結婚してからした住居の移動は5回。

ふたりで暮らしたいちばん長いおうちになりました。

使い勝手も身体になじんで居心地がいいけれど、

長く住まうとやっぱりモノがじんわり増えていくものですね。

 

数年前に立て続けに祖母と伯母を見送って、

空き家になった家の片づけをぼつぼつ始めていたのです。

十数年前に建て替えをしたので不用品はほぼ処分してあったし、

老嬢ふたりの暮らしはとてもきちんと整理されていました。

それでもなお、主のいないモノたちの処分は大変。

物理的には大きいものの処理や、

清潔に暮らしていても積もっていた隅々の汚れやほこり。

精神的には「これは大好きだったし……」(でも私はいらない)など

気持ちのハードルが高くてなかなか踏ん切りがつかない。

日記や写真を発見すると作業が途中で止まる(そして泣く)。

楽な方だと分かっていても心身ともに疲れました。

 

自分のものを自分で処分するのだってそれなりに労力を伴う。

なにより今がいちばん若くて元気(なはず)。

我が家もとりあえずそろそろ?と重たい腰をあげました。

 

物欲はそんなに強くない方だと思っているのですが、

それでも干支が1周以上するとそれなりにいろいろ堆積していて。

年齢とともに暮らし方も少しずつ変わっているので、

あの時は必要だったのに今はいらないものもちらほら。

もう大人数のお客さんをすることもないかな?とか、

重たいコートや鞄は手に余るとか。

 

今まで引っ越しの度に「どうしよう?」と悩んだのは本。

私の暮らしの中で唯一増える一方のもの。

心を鬼にして断腸の思いで処分しても、

その後読み返したくなって買いなおすこともしばしば。

でももう本棚(扱いしている強力収納棚)はいっぱいで、

溢れた本が生活スペースを侵食している。

流石にずぼらな私でもこれはまずいと思うレベル。

 

悩む原因は読み返すことが好きだから。

スペースさえあるならできるだけ手元に置いておきたい。

年をとったせいかと感じたけれど、

よくよく考えたら若い頃から同じ話を繰り返し読むのが好きでした。

我ながら進歩のない本の読み方だなぁと思います。

次々に新しい本を読んでいたら物知りになれていたのかも?(誤解)

脳内作家フェアを開催して同じ作者の本を刊行順に読むのも好き。

長いものはもう40年近くのお付き合い?

読みすぎて浴槽で読書はしないのに(持ち運びはする)、

ボロボロになってこれが3代目なんて本もある。

 

基本積ん読はしないのでみんな読んだ本。

ジャケ買いしたけれど好みじゃなかったとか、

どうしてもポリシーが受け入れられないとかでも最低2回は読む。

文体が受け入れられない作品は、

店頭でページをめくれば分かるから避けられる。

でも好きじゃない本はお別れの決心が簡単につくのでいいのです。

問題はどんどん増える、愛しの本たち。

 

20年かけてドストエフスキーとは別れる決心がついても、

トルストイとは離れられない。

とはいえ「戦争と平和」なんて5年に1度読むかどうか。

そのためにこの体積を保存しておくのも非合理的な気もするし。

だけど5年ごとに買い替えるほどのお大尽じゃないし……。

でもいつでも手に入る名作は判断もまあまあ簡単な方。

 

昔は好みの書店かどうかを品揃えで判断していましたが、

本屋さん自体も減っているしどこものっぺりと似た表情に見える。

寂しいけれど誘惑が減った!と思った頃に密林さんが登場して、

入手可能な本の範囲がぐっと広がったのも悩ましい。

学生の頃に図書館で読んで好きだった本を思い出させないで……。

マイナーなものほど「この機会を逃したら?」という気持ちもあって、

つい手が伸びてしまう。

南米文学なんてマルケスはとにかく、

プイグの再販が500部の奥付を見て涙が出そうになりました。

買ってよかった!だけれど、もっと売れて!とも思ってしまう。

 

行きつ戻りつして今回お別れした本は収納に収まらない分だけ。

本当はもっと思い切った方がいいのだろうし、

更に言うなら電子書籍のこともちゃんと検討すべきかも。

大体残りの人生はあとどのくらいで、

どれだけの時間を読書に割けるのかも結構大事な問題。

新しく好きと思える本にあと何冊出会えるのか。

大好きな私の定番たちをあと何回読み直せるのか。

そんなことを殊勝に言いつつも、今日も書店でばったり出会った

池澤夏樹さまの最新刊をうきうきで連れ帰ってしまうわたくし。

読むの楽しみ(←懲りてない)。

 

引っ越しの度に私と一緒に移動していて、

一度も開いていない結構な場所を取る本のかたまりがあります。

私の一番大好きな幸田文の全集。

初めてのボーナスで思い切って買って、

「これは老後の楽しみに取っておく」と決めた本。

中身は単行本や文庫で知っているものも多いけれど、

一部旧仮名遣いの、ご本人が書いたそのままの姿の文章で

のんびりじっくり味わう日をずっと心待ちに先延ばしにしていました。

ふと今回手に取ってみて気が付いたのは。

……全集って立派な造りなだけに本そのものが重い。

これはおばあちゃんになると手に負えなくなってしまうかも?

そろそろ老後読書、始めちゃおうかなと思っています。

 


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