11月にした旅の話です。
休暇に入る夫を待たず、先に出かけることになりました。
とっても久しぶりのロンドン、初めてのひとり海外。
友人宅に泊めてもらうけれど、小心者の私は不安もいっぱい。
次から次へといろいろなバージョンのトラブルが妄想できる……。
「イギリスは慣れてるからまあ困らないでしょ、大丈夫だろ」と夫。
でも困ったことが起こったらひとりで対処できるのかしら……。
ドキドキしながら飛行機に乗って。
いつもなら窓際の席を取って飽きることなく眼下の景色を楽しむのに、
今回は残念ながらど真ん中しか手配ができなかったのでよく寝ました。
両サイドに知らない人が座っていると、
お手洗いに立つのも気兼ねするものなのですね。
長い時間のフライトだと寝ていらっしゃる場合も多いですし。
夫なら遠慮なく叩き起こして済む話がひとりだとそうはいかないのねー
ということがよく分かりました。
手術して生理もなくなって頻尿も解消されていて、
本当によかったなともしみじみ思ったことでした。
元気な身体での12時間のフライトは前回の苦痛が嘘のように快適。
入国審査も終えて、さあ友人宅までどうやって行こう?
時間はラッシュの少し前、タクシーだと時間とお金がかかりそう?
スーツケースをゴロゴロ引きずって地下鉄で一度乗り換えて、
目的の駅について友人お手製の地図を見ながら歩けば。
……この道であってるの?ダイジョウブ?
なんかだんだん寂しくなってきたよ?聞いてた話と違うよね?
これって迷子じゃない?いやだ、早速トラブルに遭遇?
テムズ川を渡った先は閑静な住宅地、人がほとんど歩いていない。
あたりはすっかり真っ暗、怖い……。
そこへキレイなお嬢さんが通りかかりました、このチャンス逃すまじ。
「あのあの助けてくれる?迷ったみたいなの」と聞けば。
「あら、そっちに行くからご一緒しましょう」と言ってくれて、
大きな交差点で「そこまっすぐ行ってすぐよ」と教えてくれました。
本当に助かりました、どうなることかと思った。
それ以外にもみなさんホントに親切で。
空港でテレフォンカードを買おうとしたら店員さんが
「どこにかけたいの?国内?ロンドン?番号見せて。
(ぷっぷっぷっぷっぷ←番号押してる)
『もしもし、あなたに電話ですよ、代わりますね~』ハイ」
ってお店の電話でかけてくれちゃうし(驚)。
地下鉄の階段でふんふん言いながら荷物を持っていると若い男子が、
「大丈夫?持ってあげるよ?」って助けてくれるし(謝)。
旅先の人情はいつも以上にありがたし、でした。
私ももっと積極的に困った人に声をかけられるようにならなければ。
無事にたどり着いた友人宅ではお仕事中のJちゃんではなく、
Jちゃんのおかあさまが迎えてくださいました。
テムズ川沿いの古くて広い中庭のある立派なフラット。
Jちゃんのおかあさまは世界中のホテルで
ばりばり働いていた元キャリアウーマン。
通されたお部屋はかつてのお仕事がらか高級なお宿のようでした。
シェルフには各種ガイドがきちんと並んでいて個人宅とは思えない。
「かのこさん、これ持ってて」と渡されたのはなんと携帯電話。
え?どういうことですか?まさかわざわざ?
「うちね、海外からのお客さまが多いから専用のがあるの。
ロンドンにいる間、出先で困ったらこれでかけてちょうだいね」
至れり尽くせりでお礼の申し上げようもございません。
「お構いもしないから自由に過ごしてね」と言っていただき、
本当にリラックスして楽しい時間を過ごさせてもらいました。
真のおもてなしとはこうやってするのだなとお勉強にもなりました。
日中はひとりで自由に気分と足の向くまま。
フラットのすぐそばにあるバス停からは大好きな博物館まで一本で。
2階建てバスのいちばん前に座って景色を眺めるのが楽しくて、
地下鉄で行けるところも敢えてバスで出かけました。
オリンピックがあったせいなのか、
バスのアナウンスがきめ細かくなっていてびっくり、電光掲示板まで!
昔は景色を見て降りたいところでボタンを押していたのが嘘のよう。
そういえば公共の建物のトイレも以前では考えられないくらい
キレイになっていました。
それと、トイレのハンドドライヤーの勢いがスゴイ。
吸引力だけではないのですね、ダ○ソン。
ロンドンではとにかくV&Aとナショナルギャラリー三昧。
大好きな工芸品や絵画の前で好きなだけいくらでもうっとりできる。
誰もいない薄暗い部屋できれいなものを眺めるだけの時間は至福。
疲れたら座って、時々建物から出て周りをお散歩して。
お腹がすいたらご飯を食べて。
縛りがひとつもないぶらぶら遊びは本当に贅沢でした。
ひとりで心配と思っていたけれど、案外単独行動のいいことも多く。
「今日はもう疲れちゃったから続きはまた明日」と無理をしないで、
同じところへしつこく何度でも通えたり。
以前よく使っていたチャリングクロス駅から
懐かしくてわざわざ目的もなく電車に乗ってみたり。
「織物協会」を探してまんまと迷子になってしまったり。
連れがいたら「こんなつまらないことに付き合わせられない」と
遠慮するようなことが気ままにできるのは殊の外楽しかったです。
夜はJちゃん一家の晩の食卓に混ぜてもらって、
ステキなキッチンを使わせてもらって私も料理に参戦したり。
初めて会ったJちゃんの娘ちゃんたちはとても可愛らしくて、
イギリスの女子中高生の主張が聞けたのも新鮮。
久しぶりにJちゃんとゆっくり話もできていい機会でした。
Jちゃんのご主人がノルウェイに住むおとうさまと旅行中で、
お目にかかれなかったのだけが残念。
「次回は一平さん(←かのこ夫)も一緒においでよ」
うんうんありがとう、そうするね。
ロンドン最終日の日曜にはJちゃんが、
「かのこちゃん、迎えの車何時に来るの?」
ええとね、お昼過ぎ、1時半。
「じゃあドライブしよう、公園に行って鹿を見よう」
え?ロンドンの公園で鹿?
フラットから車で15分ほど、驚くほど大きな公園がありました。
ホントだ、鹿もいる!
かつては王族の狩場だったとか、王様の威力ってスゴイのですね。
緩やかな丘陵地帯がそのまま広大な公園として残されていて、
車で走ってもらったのは後から地図を見たらほんの一部。
ぽつぽつ古い建物や庭園もあって、
Jちゃんお勧めのスポットからは眼下に町がキレイに見えました。
冷たい空気の中をたくさんの緑や枯れ葉に囲まれて、
どうでもいいことを喋りながら歩くのはとてもいい時間でした。
ドライブから戻ったらJちゃんは座る間もなくキッチンでごとごと。
何してるのかな?と思っていたらホカホカのスコーンが出てきて、
ロンドン最後のランチはとびきり美味しい幼馴染みのお手製でした。
その一部とバターとジャムとクロテッドクリーム、
使い捨てナイフとナプキンまでキレイにタッパーに詰めて、
「ハイこれ一平さんがお腹すいてたら車で食べてね」と持たせてくれて。
Jちゃん、あなたは私の知人の中でいちばんのべっぴんなんですけど、
行動も性格も相変わらず美人なのね、ありがとう。
私もそんなオンナになれるように頑張ります(←外見は無理だけど)。
旅の話、続きます。