仕事の最中、ふと見上げると、空と一緒に背の高い建物が視界に入る。
 俺は一体何をしているんだ。
 生まれも育ちも、この街のはずなのに。
「空はデカいのに、……何でここから見える景色は空が遠くに見えるんだ」
 つい言葉が口から漏れた。
 お前をイメージすると、いつも空を例えてた俺だった。
 そして視界を覆う建物がまさに俺のような気がして、切ない気分になった。
 俺がお前に好意を抱いて背伸びをしているように、建物も空に憧れて背伸びをしているように見えた。
 でも俺はお前の隣で並ぶことが出来ないように、建物は空と並ぶことは出来ない。
 それを思うと、お前と俺はいつまでも近い場所すら行けないような気がして……。
 ポタポタと悲しい雨が、俺の頬を濡らしていく。

「……お前にふさわしい男になりたいが、俺はいつまでも隣に行けることはない」

 建物が空に焦がれるように、俺はお前に焦がれて泣く男。





(一次創作のショートストーリー)

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