「独歩くんじゃないか!!こんなところでどうしたんだい」
俺は上司の接待で朝方まで飲んでいた。
デロデロに酔っていた。
飲むなら楽しく一二三と飲みたい。 そう思って帰ってきたら、一二三と同居しているマンションのエントランスで俺は眠りこけていたらしい。
「一二三を、待っていた」
一二三は仕事帰り、俺は朝帰り。
「独歩くんは朝帰りかい?」「仕方ないだろ、接待なんだ。終電で電車は無いし。悪酔いして気持ち悪いから、エレベーターで吐きそう。……乗れない」「全く。そんなブラック企業なんて辞めればいいじゃないか」
そう言いながら、一二三はスーツのジャケットを脱いだ。
「どっぽちん、歩ける?」
いつもの一二三。 俺はこの一二三が好きだし、俺が落ち着く一二三だ。
「うぅぅ……、歩けそうにない」「しょーがない。どっぽちん、オヒメサマ抱っことおんぶ、どっちがいい?」「俺を女性扱いするな」「ハイハーイ、どっぽちん背中どーぞ」
一二三はオレの背中ににジャケットを掛けて、俺を背負った。
エレベーターに乗ったとたん、俺は一二三の背中に汚物を吐きだした。 やっぱり最悪に酔っていた。 どうせ俺はいつもこうだし、俺が一二三を助けているようで、俺が一二三に助けてもらっている。
俺はこんな自分自身が死ぬほど嫌いだった。
_____
「今日は仕事どうだったの?」
『あ、昨日か!!』と一二三は笑ってだけど、まだ寝てないから朝が来ていても今日みたいなものだ。
「ハゲ課長に『満足に仕事も出来ない、新人以下だ』って怒られた。それで成績あげようとしたらこの有様」「あーあ。やっぱ、どっぽにはこの会社向いてないよ」
一二三が俺のゲロで汚れたスーツを脱ぎながらそう言った。
「どっぽは優しいから営業なんて無理だし?辞めちゃいなよ、そんな会社」「そうだよな……たしかに向いてないよ。自分でも分かってる。課長の尻拭いも部下のミスも全部俺が謝って。すみません、すみません……心から謝っても、俺の気持ちなんて通じない」「そーそー、どっぽちんは俺が養ってあげるし」「……俺はそこまで落ちぶれてない」「そーなの?どっぽちん、前向きじゃん!!そのいきそのいきっ」
一二三は下着も脱いで、身に付けていたもの全てをその場に脱ぎ捨てた。 それからボーッとしている俺のヨレたスーツに手を掛けて脱がしはじめた。