物がなくなることの不安。
物取られ妄想が強い人の不安な気持ち。
それを象徴するような言動が、Yさんにはある。
いつもだいたいなくなるものは『めがね』。
「盗られる」ことはYさんにとって事実であるから、目の前にあるはずの「めがね」がないときは「しまい忘れた」のではなく「盗られた」ことから全てが始まる。
いつもだいたいしまう場所は押入れの中にある小さな3段のタンスの真ん中か一番下。
9割がたそこから出てくる。
自分でしまったのに、自分でそこを探しても見つけられない。
時と場合によって、スタッフが探すタイミングは違う。
自分から
『おねーさーん。めがねがなくなった。盗られてなければいいが・・・・・。おねえさんが探すと見つかることがあるから探してくれないかい?』
と言うこともあれば
『このーくそどろぼうめ!!めがねまで盗りやがって!買ったら10万もするというのに!このやろうー!金持ちから盗ったらいいだろう!!』
と延々と部屋の中で文句を言うこともある。
見てください、と言われたときは探しに行くし、頼まれなくても部屋の中で困っているようなら声をかけ探すことになる。
だいたいその場所からそれは出てくる。
その時だいたい
『あーーーーー。よかった!!あった。』
「よかったね」
『ここへしまっといたの、わすれてた。よかった。今買ったら10万はするんだ。お金がないからどうしようかと思った』
「いつもここへしまうの?」
『そうなの、ここへしまったことわすれて・・・・・ここへしまったらどろぼうもわからんかったんだね。よかった、やっぱりこういうところへしまうと盗られんですむ!やっぱりここへしまってよかった。こういうところへしまわんとだめなんだ』
「・・・・・」
自分でも探せないような場所へしまうことは、どろぼうも探せないことになって、探せないような場所へしまうことがよかったことになる。
でもふと、盗られることは事実だから、もっと探せないような複雑な場所へ隠しておくことを思いつく。
そして自分では探せず、『盗られた』ことになる。
そして、盗られるからともっともっとわからない場所へしまおうとする。
みつけられなくて盗られたことになる。
・・・・・・・・・
エンドレス物語である。