講演Ⅳ:「認知症とともに生きる人とその人のケア・パートナーがあなたに求めること」

講師 ポール・ブライデンさん


ポールさんのプロフィール

『1970年から1984年までオーストラリア連邦政府外務省に外交官として勤務し、主に国際貿易問題に携わる。その後、オーストラリア農業省で、ニュージーランド食糧局の要職に就く。1998年認知症の診断を受けていたクリスティーン・ボーデンさんと出会い。翌99年結婚。現在はアルツハイマー病協会サンシャイン・コースト支部(オーストラリア)理事長』


ポールさんのお父さんも認知症で、病院で亡くなりましたがその最期は悲惨だった、と話されていました。クリスティーンさんと出会ったとき、最初の1時間で彼女から認知症であることを告げられたが、何も問題はない、上手くいくと思った、とのことでした。お父さんの姿を見ていたからこそ、認知症の人に何が必要なのかがおわかりになったのでしょう。


1、その人中心のケアを

私の目を見て話をしてください。廊下ですれちがったら名前で声をかけてください。

自分の存在に意義がある・・・・・・・名前を呼び挨拶をする。

病気になっていても話し相手として十分ふさわしいのです。

常に何が問題なのかを探ることが大切です。


2、尊厳と尊重を

妻は自分の考えや思い、感情そして経験を持つ一人の人です。

もしかしたら私よりもあなたよりもずっといろんなことを成し遂げた人生を送ってきているかもしれません。

彼女の知恵を尊重してください。たとえそれをうまく表現できなくても。

「たましい」に話しかけてください。


3、平和と自由

静かなところが必要です。

音はエネルギーを吸い取ってしまいます。

気の向いたときに部屋に行き、庭や図書館などにいけるようにしてください。

彼女がそうしたいときに入浴させてください。

「入りたいとき」「食べたいとき」にそうさせてください。


4、安全、プライバシー支援

安心感が大切です。

彼女の現実に入っていってください。

特に夫との時間、ケア・パートナーとのプライベートな時間をあげてください。

ケア・パートナーがいないときは何かを決めるとき皆さんの助けが必要です。

時には私が不当なことを言っていたら、私に反対してでも彼女のためを思って支援していくことも必要かもしれません。

全ては取り込み方で、それには他の方との交流が必要です。


5、部屋にはブロードバンドを

部屋にはブロードバンドに接続されているパソコンが欲しい。

インターネットにつながることによって、世界中の友人たちとつながっていられます(私とも!)。


6、ねこ

常に一緒にいる友として猫もおいてほしい。

いぬでもいいと思います。


7、すぐに理事会メンバーに

アドバイザーとして理事会メンバーに迎え入れてください。

私たち抜きで私たちのことはありません。

私たち抜きで何事もすすめないでください。

まだみなさんと共有できるうちに、彼女の知恵、ネットワークを活用してください。


8、ベストなケアが唯一のケア

妻であり恋人であり親友でもある妻には、ベストなケア、私がして上げられる以上のケアを求めます。

認知症の人がよりよく生きるようにケア産業として大きな挑戦となるでしょう。

その挑戦に私も関わっていきたいと思います。



会場からの質問に対して

①クリスティーンさんが北海道を気に入ってくださったと聞きましたが、北海道のどんなところが好きですか?

・・・・・「トマト」と「ごはん」がおいしいと言うことを聞きましたので、という理由だったことを今ポールから聞いて、思い出しました。


②ポールさんへ:ケア・パートナーとして気をつけることはなんですか?

・・・・・自分のケアができないと他人のケアは出来ません。健康面では高血圧なので注意しています。あとは趣味を持つことです。私はヨットを作るのが趣味で行っています。また地元の監獄の囚人たちと関わるということも行っています。


③ポールさんへ:干渉し過ぎないということは必要ですか?

・・・・・そうですね。時には離れると言うことも必要です。オーストラリアには一時ケアというシステムがあります。


④クリスティーンさんへ:今行っている主婦としての仕事はどんなことですか?

・・・・・主婦としての仕事は出来ないものが増えてきていて、不安と心配の基です。風呂掃除はしています。料理や買い物は一緒に行っています。アイロン、掃除機はポールがしています。


(正確に残せていない部分もあるかもしれませんが、ご了承ください)


最後にポールさんのほうから会場のに向かって質問がありました。

『この会場の中にケア・パートナーはいらっしゃいますか?』

数名の方が手を挙げられ、ポールさんは『お互い頑張りましょうね』と声を掛けていました。

その直後、クリスティーンさんが

『この会場に認知症の方いらっしゃいますか?』

右側前列に座っていた方、2名の方が手を挙げられました。クリスティーンさんは満面の笑顔で両手を挙げ彼らに大きく手を振り

『一緒に頑張りましょう!!』

と言ったのです。

会場は大きな拍手に包まれました。



お二人は、とにかく自然体で、さりげなく、互いを支えあうように寄り添いっていらっしゃいました。

クリスティーンさんが「崩壊していく」不安と戦いながらも、こんなに穏やかでとてもすがすがしいあの笑顔をしていらっしゃるのは、ポールさんというパートナーがいればこそ。

お二人の姿はいつまでも目に焼きついています。


とてもすばらしいお二人に感謝です。


ほんとうにありがとうございました。