舞台「汗が目に入っただけ」
大切な思い出として感想を書いてみました。
(カロリーでは無く、本筋の物語について)
削除しきれずに長文です💦
「汗が目に入っただけ」感想
この作品を観て感じたのは、お葬式がテーマなのに重くなりすぎず、たくさん笑ってたくさん泣いて、とても心を揺さぶられた作品でした。
笑いの場面が多いからこそ、家族の温かさや愛情がより自然に伝わってきました。
何度か観るうちに、登場人物それぞれの一生懸命さに目が向いて全員が愛おしくなりました。
笑っていたはずなのに、気付けば少し泣きたくなる。
そんな不思議な温かさを持った作品だったように思います。
私が心を動かされたのは、誰かが誰かを想っている場面でした。
お葬式をめぐる物語ですが、心に残ったのはそれぞれの愛情の形だったように思います。
まずは主人公の由美子です。
亡くなった後も生前と同じように子ども達の世話を焼き、あれこれ気にかける姿がとてもチャーミングでした。
お葬式の話なのに終始明るく感じられたのは、由美子の存在が大きかったと思います。
また個人的にも、境遇に重なる部分が多かったので親近感を覚えました。
離婚して娘がいること、元夫との距離感。
たとえば舞台の最初、娘への呼びかけ。
娘の目の前で手を振りながら「千聖」と呼んでみる。
気づかない娘に「ちーちゃん」と呼ぶ。
「死んでるんだもんね」
たったそれだけなのに、親子の時間や関係性が見えてきて、2度目からの観劇では思わず泣きそうに。
きっと私も同じことをすると思う...そのリアリティに心が動かされました。
そんな風に舞台の中には由美子の子ども達への優しさが散りばめられていました。
子ども達への愛し方なのですが
いつも平等に愛しているというよりも
その時いちばん傷ついている子
いちばん支えを必要としている子
自然とその子の味方になろうとしているように見えました。
(尾田さんに『現世に執着する幽霊は心変わりしないですよ!』と言われてました)
最初は、一生懸命にお葬式を準備した千聖の想いを大切にしてあげたい。(キリスト教式)
次は、両親の離婚によって寂しさを抱えてきた(それを今知った)長男を味方してあげたい。(仏教式)
最後は、「自分には何もできない」と自信を失いかけている翔くんが気になって仕方がない。
でもそれが母親なんだろうなって
胸が熱くなりました。
兄弟たちの母への愛情もそれぞれでした。
長男と長女は、自分なりの考えで母をきちんと送り出したいという想い。
突然に母が死んだ悲しみを抱えながらも、気丈に現実に向き合っています。
母にキラキラのドレスを着せてあげたい千聖。
母と一緒に行ったミサの思い出。
その気持ちは同じ女性だからすごく分かる。
きっと母と娘、女同士の時間が2人にはあったんだと思う。
父親の事業が傾きかけた時から
長男として家族を支えようとした匡の責任感。
離婚で家族がバラバラになってしまったけど
最後くらいは普通の形で送り出してあげたい。
それぞれの立場の中での不器用な愛情。
そして私が一番に心を惹かれたのは翔くんです。
兄や姉がお葬式という現実に向き合う中で
翔くんだけは最後まで「お母さん」を求め続けているように見えました。
愛されていたと信じたい。
期待はずれの息子じゃなかったと認められたい。
母の息子でありたい。
その想いの強さが、この場に及んでも仕事の成功を強く求める気持ちに。
(お葬式の日まで仕事やらなくてもいいって普通なら思うのに・・・)
その不安定さが、観客が翔くんを応援し見守る気持ちになる気がしました。
そして翔くんはお父さんのこともどこかで理解してるんじゃないかなと。
事業に失敗し、家族からも距離を置かれている父。
自分自身も仕事がうまくいかないからこそ、父の苦しみが分かる気もする。
だから完全には突き放せない。
末っ子らしい優しさや情の深さを感じました。
長男や長女が由美子に似た強さを持っているとすれば
翔くんは少し違っていてお父さんに似ているのかもしれません。
少し脆くて、優しくて、情が深い。
だから由美子も翔くんが可愛くて仕方なかったんじゃ、そんな想像も浮かびました。
元夫とのやり取りも印象的でした。
私も離婚をしたので妙にリアリティを感じました。
由美子は吹っ切れているのに、元夫はどこか未練が残っています。
離婚の原因は自分なのに、どこか被害者感を漂わせて・・・
「あぁ、いるいる(私の元夫だわ)」と思ってしまいました。
うちは夫のギャンブルが原因で離婚
3人で会った後、いつも私と娘は
「パパが悪いのに、なんであの人哀愁漂わせてるんだろうね~(養育費も払わないのに)」
いつもそんな話をして笑っています。
由美子の未練のない明るさと強さ、それでもなお残る情、これも共感できました。
そして忘れられない存在が尾田さんです。
葬儀社の人間でも無いのに偽って・・・
家族に嘘までついて由美子の頼みを叶える為に一生懸命に動く。
嘘がバレそうになるのを必死にごまかす尾田さんのコメディが最高に面白い。
最後のクライマックス
それぞれが抱えていた傷が一気に噴き出す場面
争いを見かね、大声をあげて「音楽葬にしよう」と言いだした父親。
彼の中ではいまなお残る由美子との🎸の思い出。
フェスの仕事に未練のある翔くんは音楽葬に賛成🎸
失恋で傷ついた長男は父と母の愛を信じて音楽葬に賛成。
男たち三人はタッグを組んで一つになろうとします。
しかし、そこは千聖が許しません。
長男の失恋、翔君の仕事の失敗を責め立てます。
自分たちの傷を理解せずに美談のようにまとめようとすることが許せなかった。
さらに事態は最悪に・・・
この時の翔くんの辛そうな表情がすごく印象的でした。
そんなバラバラに壊れそうな家族の間に
自分が悪者になることを恐れず前に出る尾田さん。
幽霊になってる由美子の代理なんて信じてもらえないかもしれないのに...
そして由美子の言葉を真摯に必死に家族一人一人に伝える。
この物語は尾田さんの優しさに包まれている気がしました。
見ず知らずの他人の為に一生懸命に動く。
最後の笑顔まで、その優しさを恩に着せなかった。
その静かな在り方が、とても印象に残りました。
血のつながりはなくても、人はこんなふうに誰かに寄り添えるんだと感じさせてくれる存在。
そして由美子が子どもたちへ残した言葉。
舞台を通して描かれてきた「それぞれの子どもたちを思う気持ち」がそのまま言葉に。
子供達が傷つくのを見るたびに「成仏できる気がしない」と言ってた由美子。
気持ちを伝えられて本当に良かったなと。
一番号泣したのは「私もう成仏したって伝えてください。姿も声ももうわからなくなったって」という言葉。
母親としての愛がその言葉に詰まっているように思いました。
お葬式のやり方を求めることもなく
自分を忘れないでほしいとすがるのでもなく
子ども達が前を向いて生きてくことを願っている。
子ども達への想い以外に、何も欲張らない。
だからこそ「あぁ、本当に旅立つんだな」と思い、涙が止まりませんでした。
この作品には様々な愛が描かれていました。
幽霊になっても子ども達を気にかける母の愛。
それぞれの形で母を愛する兄弟たちの愛。
人として心を砕いて寄り添う尾田さんの優しさ。
みんな不器用だったり素直じゃなかったりするのですが、それでもちゃんと相手を想っている。
だからこの作品で描かれていたのは、お葬式そのものではなく、人と人とのつながりだった気がします。
たくさん笑って、たくさん泣きました。
毎回とても温かい気持ちになりました。
感動をこれからも大切にしたいと思います。
今日も読んで下さってありがとうございました。








