“よろしく”
仕事の依頼を受け、今日はキックオフに呼ばれた。
スタッフが揃っている中、私に一言かけてくれた言葉。
最初だから、企画の説明から始まり、具体策について、それからスケジュール等、大まかなところの意思の疎通が行われる会議。
気付いたら三時間。外も暗くなり、そろそろ終わりそうな雰囲気。
やることてんこ盛りで、なかなかのプレッシャー。でも同時にワクワクしている自分もいる。
“それじゃ、今日はこれくらいで”
みんな立ち上がり、帰りの段取りをつけていたところ…。
“みんなで夕飯でもどお?”
プロデューサーからの一言。
帰る支度と店の予約を取るから、と少し待ってる間に、私はトイレへ。
少々迷路な造りになってる会社の廊下を歩いて行くと、後ろから足音…。
“…わぁ…?!”
“捕まえた”
廊下の沿いにあった暗い部屋に引っ張られて、後ろから抱き締められたい。
“ち、ちょっとマズイですよ…”
“作戦成功”
喜んではしゃぐ彼。
“目の前にいるのに、これは拷問だよ”
“だからって…誰か来ちゃいますよ…”
“嫌?”
“…じゃないですけど…”
いたずらっ子のように笑って、楽しんでる。
この仕事が決まるまで、しばらくなんでもない連絡は控えていた。
集中したいだろうし、この仕事は絶対に取りたいと言ってたから。
だから余計に大胆になったのかも。
“会いたかったんだ”
“…”
“連絡なくなってきたし、飽きたかと思って心配してた”
“…”
“なんで何も言わないの?”
“…嬉しすぎて…感無量…です”
“そう!うん…心臓のドキドキ感じる”
誰かの足音が廊下から聞こえ、近づいてくる。
“マズイ…”
さらに引っ張られ、奥の扉に入った。
“スゴい…前向きの方がドキドキがよくわかるよ”
“…こうしてほしかったから…”
“うん、ありがとう”
さて、そろそろ戻らなくては本当に怪しい行動になってしまうが…。
“今日は終わったら、二人になれる?”
この緊急事態にも、彼は今の状況を楽しみ、今後の予定を計画している。
“ん?なんで笑ってる?”
思わず吹き出してしまったけど、こういうところがたまらないのだと改めて思った。
みんながいる前で、果たして私はどんな顔でいることか…。
俯瞰して見たくなった。