宝石赤BRICs経済研究所(代表 門倉貴史) では表題のレポートを発表しました。概要は下記のとおりです。


2006年7月5日、北朝鮮が断続的に日本海に向けて弾道ミサイルを発射した。これに対して、日本政府は、北朝鮮の貨客船「万景峰92」の入港を半年間禁止するとともに、北朝鮮当局者の入国は原則として認めない、日朝間の航空チャーター便の乗り入れを認めないなどの制裁措置を発動した。国連安全保障理事会にも働きかけを行っている。今後は、「外国為替および外国貿易法」に基づき、日本単独で北朝鮮への送金・貿易を停止する公算が大きい。その場合、北朝鮮経済に対してどの程度のマイナス・インパクトを与えることができるのだろうか。

(貿易停止)自民党の対北朝鮮経済制裁シミュレーションチームは、2005年2月15日、日本が独自に経済制裁を発動した場合の試算結果をまとめた。これによると、北朝鮮との貿易を全面停止すれば、北朝鮮の国内総生産(GDP)を▲5%から▲7%程度下押す効果があるという。韓国中央銀行の推計によると、北朝鮮のGDPは1697500万ドル(2000年~2003年平均)。経済制裁によって、このうち8億ドルから11億ドルが減少する計算だ。北朝鮮のGDPに占める日朝の貿易額は、約2%程度にすぎないが、雇用への影響など間接的な影響を含めた経済波及効果はその数倍に膨らむ。

(送金停止)一方、送金停止については、日本から北朝鮮へ送られた資金は、財務省への届け出ベースで304300万円(05年度)となっている。この程度の送金額では、日本が送金停止の措置をとっても、北朝鮮のマクロ経済に与える影響は限定的だろう。実際には、不正送金のかたちで相当の資金が北朝鮮に送金されているとみられるからだ。

日本から北朝鮮への送金の多くは、パチンコ店の脱税資金といわれている。全国のパチンコホールの数、北朝鮮籍の経営者の割合、国税庁の査察で判明したパチンコホールの脱税所得などをもとに推計すれば、送金額は年間2019億円にも上る。これらの資金は、現金で持ち込む、地下銀行を経由するなどの手段によって送金されている。仮に、不正送金の部分も停止することができれば、北朝鮮には、18.4億ドル程度のマイナスインパクトが発生(GDPの10.8%程度)するとみられるが、現実問題として不正送金部分の停止を行うのは難しいとみられる。