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「ミラーズ」


鏡というものは、昔から何か‘気’のようなものがあると信じられてきた。

さかのぼれば、古代、卑弥呼の時代には、鏡を神の化身や象徴とあがめてきたと言われているし、身近な話で言えば、鏡が割れたら不吉、なんて迷信、ついつい信じてしまう。

大好きな映画「Dragstore cowboy」でも、「鏡を上に向けてベッドに置くな!Bad luckがやってくる!」とマット・ディロンが神経質に叫ぶシーンがあった。

あれ?ベッドに置いちゃいけないのは帽子だったっけ…?

とにかく、鏡というものは、少し神秘的な要素があるように思う。

映っているのは自分のようで、自分ではない。

だって、日々朝5分以上チェックしている鏡の中の自分と、撮った写真の自分が全然違う顔していること、だれでもあるはずだ。

あら、こんな顔してたっけ、写りが悪いだけでしょ、なんて言っているけど、実は日頃さらしているのは、写真の中の自分の顔だったりするものだ。

そんな神秘的な鏡について、不思議なことが起きたら…というテーマで作られた「ミラーズ」。

全焼してしまい、火災保険の訴訟で、取り壊しを待たされているデパートを夜警する男を、24ジャックでおなじみのキーファー・サザーランドが演じる。デパートに禍々しく備え付けられた鏡に夜な夜な見えないものが映る…というから、そりゃ、本当に怖い。

鏡の枠のさらに奥では、どんなことが起きているんだ?と小さいころ想像して、頭の中がグルグルになってしまったことを思い出してしまった。

ただ、鏡の中で、現実以外の別のパラレルワールドが織りなされている、ということだけで十分怖いのに、「怖いだろ!」を過剰に演出しているのが、ちょっと残念だった。

かなり残酷に関係者が死んでいき、ジャックも(役名はジャックではない)傷つけられていくのだが、その残虐さや血なまぐささに気を取られているうちに、なんだか怖さも薄れてしまったような気がする。

題材的にはとても怖いのだから、自信を持って勝負すればよかったのに、というのが個人的な感想。

それにしてもジャック、もとい、キーファー・サザーランドは、「みんなに信用してもらえなくっても、俺、体張って敵と戦ってやるもん!」な役が身についてしまった。

いい役者のはずなのに…血みどろになって、無謀なまでに一人悪と闘い、酒をあおっていると、どうにもバウワーにしか見えなくなる。

そろそろ、クレイジーな殺人犯とか(フォンブースよかったんだから)、ギャング時代の親分とか、トライしてみてほしいものだ。




「ミラーズ 」

監督:アレクサンドル・アジャ

制作総指揮:アーノン・ミルチャン、キーファー・サザーランド他

出演:キーファー・サザーランド、ポーラ・パットン、エイミー・スマート他



http://movies.foxjapan.com/mirrors/




ミラーズ (完全版) [Blu-ray]



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「G.I.ジョー」

公開時に見逃した「G.I.ジョー」をDVDで観る。
なかなか面白いのがキャスティング。
狙いすぎず、でも新鮮な人選をしているのも、心地いい。
特に新鮮なのは、誰もが気づくイ・ビョンホン。
アジア人気狙いだけじゃなく、冷酷なキャラクターと程よいアクションを担っている。
無意味に脱ぐ戦闘シーンで、韓流ファンは卒倒必須。
若干「シルミド」を彷彿とさせるシーンもあるけど、キャッチーなほかの人選にうまくとけこんでいる。
冷酷なキャラになりきれないシエナ・ミラーもいい。
やっぱりシエナはキレイというよる、コケティッシュでチャーミングなのだ。

タイトルを聞いた時は、デミの「G.I.ジェーン」の男版?と思ったけれど、正直全く予想を裏切られる。
マトリックス?いや、トランスフォーマーか。
パリでの追いかけっこは、タクシー的ターミネーター…いや、ピアーズ・プロスナンの007だし。
とにかくエンターテインメントのいいとこどり。
深く考えずに見るべし、の一本。
あー、高速スーツ、着てみたい!



「G.I.ジョー」

監督:スティーヴン・ソマーズ
出演:チャニング・テイタム、レイチェル・ニコルズ、シエナ・ミラー、イ・ビョンホン、デニス・クエイド

http://www.gi-j.jp/


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「This is it」


ドキュメンタリー映画としては、空前のヒット作になったであろう、「This is it」。

先週末に、延長していた公開も終わった、マイケル・ジャクソンの最期のリハーサルの姿だ。

「クオリティの高さにびっくりした」、「あれがリハかと思うと、本当に驚いた」の声を聞き、少し期待して観ていったものの、やはりリハはリハ、というのがリアルに思ったこと。

客が入ってのライブだし、観客の声や感動の表情で、ステージ上のアクターたちは才能の100%以上の力を見せられるものだ。

普段から120%がアベレージだったら、ライブ自体の意味がなくなってしまう。

がらんどうの観客席に向かって奏じる演奏はやっぱりどこか気が抜けているし、衣装だって普段着のままのリハーサル。

当然と言えば当然だけれど、やっぱり「本番自体を見てみたいよね」と思ってしまうのは仕方ないことだと思う。

もちろん「あれがリハかと思うと驚く」ところはたくさんあって、マイケル・ジャクソンのさらっと踏んだステップは天才的以外の何者でもないし、ちょっと合わせてみよう程度に歌いだした歌は、とてもドラマティックで、歌と踊り、本当に素晴らしいエンターテナーだったのだと、しみじみ思った。

ただ、端々で見せる、マイケルの舞台への本気さというかこだわりは、とてつもなくて、ちょっとしたズレも許せない潔癖度を垣間見るところもあった。

おそらく数拍の違いだと思うけれど、曲のフィナーレに持っていくタイミングを「早い、早い」とせっかちに止めてみる姿は、かつてないほどの完ぺき主義だったのだと、改めて知った。

想像はしていたけれど、病的なほどに完ぺき主義。

彼のそのストイックさは、何が起因していたんだろう。小さなころからそうだったんだろうか。そう思う人も多いようだ。多くの人たちが、ジャクソン5時代の映像を見たいと思っていると聞いた。

ただ、そういった彼の完ぺきに対しての欲求を知れば知るほど、このドキュメンタリー作品自体の存在を考えてしまった。

マイケル・ジャクソンは、きっとこんな中途半端な出来上がりの映像を人に見せたくなかっただろうな。

おそらく記録として残していたのか、はたまたこのライブ自体が実際にきちんと実施されて、高い評価を受けた時に、一部特典映像として世に出すことぐらいしか考えていなかっただろうなと。
きっと、これを作ることで、出演するはずだったバックダンサーやミュージシャン、舞台監督や制作スタッフなどの無念の思いを癒すことになったのだと思う。

ロンドン公演を、焦がれるほど待ちわびたファンもいただろうし、そう考えれば、この作品が作られたのはいいことだったのだろう。

こんな半端なものを、最高と思ってほしくなかったんだろうな、と思うと、なんだかとても胸が痛かった。


この映画を見て「こんなに踊って歌える人だったとは知らなかった」と言った若者もたくさんいるらしい。

思春期に「BAD」などのヒットを見てきた世代の私にとっては、マイケルが天才的に踊れて歌えることは、当然のことで、そのコメントすら、胸が痛かった。

この作品は、ドキュメンタリー映画としての作品性がいいかどうか、と言えば、ただつなぎ合わせただけのものであり、正直、マイケル・ジャクソンが他界しなければ、この映画はヒットしなかっただろう。

画家は、他界してから、その作品に値がつくという。

マイケル・ジャクソンは、まさに画家のような人なのだ。

この映画を観に行き、マイケル・ジャクソンの才能を知りえた人は、せめても、彼のゴシップネタではなく、彼の残した曲を聞き、多くの財産と時間と労力を費やしたプロモーションビデオを見直し、彼の素晴らしさをいろんな人に伝えてほしいと思う。

私は、生前から、ドキュメンタリーを見た今も、マイケル・ジャクソンのファンではないけれど、生前の彼の活躍を少しでも知る者として、そんなことを思った。




『This is it』

監督:ケニー・オルテガ

出演:マイケル・ジャクソン




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