「明日の私に着替えたら」
メグ・ライアンの作品は、あるひとつのパターンがある。一見、幸せそうに見える人生。でもそこにはちょっとしたガマンがある。そこに起きた事件で、状況は一変して、不幸のどん底。「私らしく」変身して、前よりもっといい人生を歩きだす。
かなりの確率で、この方程式にはまるので、じゃあ、観なくてもわかるでしょ、といったところだけれど、女はこの手が大好物なのだ。こんなこと言ってる私だって、大好きなパターン。「待ってました!」とばかりに、手をたたきたくなる。
今回の「明日の私に着替えたら」もまさにこのパターン。有能なビジネスマンの夫とかわいい娘との裕福な生活を安穏と送っていたメアリーが、夫の浮気を機に、すっかりモサくなってしまっていた自分を振り返り、忘れかけていた夢を思い出し、人生を立て直していく、というストーリー。
見ていて、気持ちがいいけれど、ちょっと残念なのは、メアリー自身が裕福な生まれだということ。人生立て直すにもやはりバックグラウンドが必要だよねと、ヒエラルキーを感じてしまうところがちょっとあったりして。
そんな中でも見どころは、キーとして全く男性が出てこないこと。会話の中で、父親、夫、男性の上司など、名前と存在は出てくるものの、その顔が全く出てこない。そのこだわりは面白いけれど、どうだろう…気づく人は、ちょっと少ないかな…。
この作品の中で、なんとも名演なのは、アネット・ベニング。メアリーの親友で、独身を通し、ファッション誌編集長として働く、バリバリのキャリアウーマン。友人の前では、人生順風満帆と見せているけれど、思わぬ展開があったりして、そんな様子が本当にリアリティがあっていいのだ。バリバリの時もスタイリッシュで素敵だけれど、どん底に落ち込んだ時の様子もとてもかわいらしくて、インテリジェンスがある。仕事は出来るけど、ほんとは小心者でおっちょこちょい。そんな姿に、働く女性はぐっと来るんじゃないだろうか。
男の友情は、色恋よりも優先されて、こんなときにああしてくれた、あいつがそんな時こんなことをした、みたいに物理的な言動が評価される。けれど女の友情は、もっと感覚的だ。女がデートを優先させるのは日常的だけど、男が友情よりデートを優先させたら、オオゴトだ。大人になればなるほど、会ったり話したりする回数よりも、尊敬できる存在であるかどうか、自分を理解してくれていると信じられる存在であるかどうか、と意識的なものになっていく。だからこそ、女の友情は、実はとてもハードルが高いのだ。
でも、一度そのハードルを越えてしまえたら、ちょっとした行き違いやけんかは、時間や会話が解決してくれる。「ごめん」の一言で、また友情を復活できるのが、女の友情じゃないだろうか。
いつも一緒にいるわけじゃないけれど、自分が胸を張って、頑張っている姿を見せたい、「頑張ってるね」と応援してもらいたいと思える友人は何人いるだろう。この人生の中で、そんな友人に何人出会えるだろう、と自分を振り返らせてくれる作品だと思う。
「明日の私に着がえたら」
監督: ダイアン・イングリッシュ
アメリカ/115分
キャスト:メグ・ライアン、アネット・ベニング、エヴァ・メンデス


