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男って、「秘密基地」という存在が好きだ。雑誌にも「隠れ処」とかよく特集するのは、男性誌が圧倒的。
小さい頃は、秘密基地に入れるのは男だけ、女子禁制、というのがよくあるルール。
それが、大人になった途端、女を連れていく、秘密の場所になるわけだから、その切り替えたるや、素晴らしい限り。どこにその境界線があるんだろう。女としては、本当に興味深い、男の習性なのだ。

とある、おしゃれなビルを設計した、建築家の男が、スケベ心でたくらんだ計画。それは、その設計したビルの最上階に、男だけの秘密基地を作ること。合鍵を5つ作って、それを仲間に渡し、お互いに共犯関係を作る。そんな男にとって夢を具現化したようなロフトで、ある日、見知らぬ女が手錠でつながれ、死んでいた…。
それぞれの男たちには、それぞれ、家族に言えない不実の行為がある。やみくもに女をひっかける男もいれば、いい女を狙い撃ちする男もいて、妻と離別を誓うほどの恋に落ちる者もいる。
まさに、夢から地獄への転落。今までの甘い蜜の代償をいよいよ払うのか、と、殺人について身に覚えのないのに、焦り惑う中年男たちの姿はなんとも情けない。
ストーリーは、死体が残されたロフトに、鍵を持つ同志の男たちが集まり、仲間内からの犯人捜しをする、密室劇がベースで展開されている。
いい大人の男たちが、「おまえだろ!」「いや、おまえだ!」とののしりあう様は、少し、「レザボアドックス」を彷彿とされて、ちょっと滑稽で、かわいくすら、感じてしまう。

ストーリーが進むにつれて、観ている我々は、ある二つのことに気づく。殺したのは誰か。この状況を作ったのは誰か。見つけるべき犯人は二人いる、ということに。
ラストは、意外な結末。
驚くべきは、この作品がベルギーの映画だということ。
ちょっとしたハリウッドサスペンスでもありそうな、このストーリー展開を、ヨーロッパのちょっと洒落た感じが手伝って、なかなか新鮮に思えた。
中年男性たちもなかなか渋めのカッコいいキャスティングで、キーになる、建築家の男も、スティングさながらにかっこよくて、洒落者だ。おなかだってパキっと締まってカッコいい。
なのに残念なのが、女優陣がパッとしないということ。こ、これがいい女…?と思ってしまうキャスティングもあったりなかったり。
なかなかいい出来なだけに、点数が辛くなってしまったのかもしれないけれど。

そういった部分には目をつぶって、なかなかベルギー映画、面白いと思います。



「ロフト.」

監督: エリク・ヴァン・ローイ. 出演: ケーン・デ・ボーウ, フィリップ・ペーテルス, マティアス・スクナールツ


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映画は、ひとつの疑似体験だ。腕っ節の強い刑事になって、悪いマフィアをやっつけるなんて体験、求めてもなれるものじゃないし、なれるとしても痛そうだしアブなさそうだから、四六時中やるなんて、お願いされても無理だ。
ときに極悪非道で、思わずほれぼれしてしまうほど凶悪な殺人犯になることもできるし、売春婦になって玉の輿を夢見ることだって、出来る。たった2時間使うだけ。映画って、お手軽で壮大な旅行のように思えてくる。
疑似体験するにも、みんながみんな、爽快や歓喜だけを味わいたいわけじゃない。惨殺される恐ろしさを味わってみたいとか、ゾンビに追われたいとか、趣味の悪い願望があるから、エグい映画もあるわけなのだ。
まさに、それがダーレン・アロフノスキーの世界じゃないだろうか。
「レスラー」はまだ観ていないのだけれど、「レクイエム・フォー・ドリーム」を観て衝撃を受けた。なんて、ひどい映画なんだろう!!と。ひどいのに面白すぎて、それがまたひどさを大きくしている。
だから今回の「ブラック・スワン」も、アカデミー賞の賞レース関係なく、すごく期待していた。
きっと、人の持つ、どうしようもなくひどい考え方や癖や性質を、目の前につきつけてくれるんだろうなと。期待は裏切られなかった。もちろん個人的な意見として。
ただひとつ、ダーレン・アロフノスキーの作品は、どこか観終わった後にすがすがしさが残る。話が終わって、エンディングが流れて、それすら終わってもまだやってこないかもしれないけれど。ベッドに入って、ふと今日観た映画を思い返すときに、なんとなく。
それはきっと、登場人物が、不幸にもその状況に陥ってしまったという、救いようのないものじゃなく、不幸な状況や最悪の環境は結局自分で選んだんだろ、というところじゃないだろうか。
だから、ラストに登場人物たちは、「まー、しょうがないよね」だったり「やりきった!」だったりという思いが表れているような気がしてならない。
後のことを考えると絶対やだと思うけど、泥沼の中に飛び込んで、ぐっちゃぐちゃになっちゃいたい感じ。

ラストの素晴らしいバレエの演出とオーケストラの奏でる音楽。堕ちていく感覚になぜか涙が止まらなかった。
これからも、そんな感覚を描き続けてほしいと思う。

「ブラック・スワン」

監督: ダーレン・アロノフスキー. 出演: ナタリー・ポートマン, バンサン・カッセル, ミラ・クニス


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「ザ・クリーナー 消された殺人」


最近、引っ越しをしたのですが、この引っ越し先が、ほぼフルリノベーションの物件で、非常にめっけもん。家賃もそう高くなくて、本当にラッキーでした。
物件を見に行った時は、床も壁もひっぱがし、キッチンも「この辺にこんくらいの…」と大工さんに説明を受けるような状態だったのですが、決めて正解だった…。
ルンルンでピカピカの新居を母に披露した際に、彼女が一言、「前は大丈夫だったのかしら…」。ネガティブ思考の彼女は、どうやら、前の入居者に何かがあったのでは!と思っている模様。そういう一言、本当に気になるから、やめてほしい…。

警察を退職して、いわくつきの現場を何もなかったように清掃する、クリーナーの仕事をする男が、事件に巻き込まれていく「ザ・クリーナー」。
殺人現場の清掃依頼を受け、清掃した家に、翌日鍵を返しに訪れると、そんな依頼はしていないし、殺人事件が起きたことすら知らないと言われてしまう始末。これはおかしいと気付いたときには、もうすでに遅く、どんどんと誰かが張った罠に落ちるように、犯人の容疑をかけられていく。
こういったサスペンスストーリーは、手堅くて、作品により物足りなさがあっても、そこそこ楽しめるから、助かる。ストーリーの途中で、大方、犯人が分かってしまって「ありきたりだなぁ」なんて言いつつも、ちょっとした取っ組み合いなんか、交えてくれたら、ちゃんと最後まで見終えることができるから、いい。
この作品は、さらにキャスティングが手堅くていい。サミュエルLジャクソンは、ほどよくかっこよくて、ちょっとチャーミング。どこかにクスッと笑わせるユーモアを入れてくるから、安心感がある。
エド・ハリスも、何かやらかしてくれる感じと、ついつい信頼してしまう感じのうらはらさのアンバランスが、安定した期待感を煽ってくれる。それにしても、SATCをはじめとしたラブコメ系でハゲのゲイは、誰に似ているかと聞かれると必ず「エド・ハリス」と言って、相手を飛びつかせる。エド・ハリスは、ゲイに人気があるのかしら…。
ヒロインは、エヴァ・メンデス。スラム出身で玉の輿に乗った、気立てのいい、セクシーな未亡人なんて、ぴったりのキャスティング。ジェニファー・ロペスでは、計算高さが見え隠れするけど、彼女なら、ほんとにお人よしな感じがして、いいのだ。

と、なかなか、すべてがしっくりきている作品なのだけれど、いかんせん、知名度が低いような気がする。
これはひとえに、安定感がありすぎるからなのかも。
吉田栄作が一時期ananで「抱かれたい男」「嫌いな男」に同時1位ランキングしていたように、賛否両論分かれるバランスの悪さこそが、話題を生むのかもしれない。
意表を突かれると、人は驚き、ときに感嘆の声を挙げ、ときに罵倒する。それこそが話題になるのか。隠れた名作、私は好きだけどなぁ。

さて、我が家ですが、決して殺人現場の跡ではありません。気になって、不動産やに「なんでフルリノベーションしたのか?」聞いてしまった…。築年が行っていたし、和室だったからと聞いてほっとしました。母に言わせれば「ダニが発生したのよ!」とまだまだ不安は尽きないようですが。


「ザ・クリーナー 消された殺人」
アメリカ/2007年
監督:レニー・ハーリン(監督) / マシュー・アルドリッチ(脚本) / サミュエル・L.ジャクソン(製作) / スコット・キーヴァン(撮影)
出演:サミュエル・L.ジャクソン / エド・ハリス / エヴァ・メンデス