　JR東海道本線平塚駅から、途中までは先の日枝神社と同じ道。平塚八幡宮の信号を左折して、すぐに右斜めに進む道に分かれ、これを30分ほども進む。金目川の少し手前に南原駐在所があり、この少し前に三叉路があり、これを右に行き、すぐにまた右に折れる。するとほどなく左に浄土宗・善徳寺。

　この寺は天正年間（1573～1592）、武田信玄の家臣だった笹尾隼人正成が敵兵の菩提を弔うために仏門に入り、善徳坊と号して草庵を開いたのがはじまり。

　この東に家康の中原御殿があり、それに伴って鷹匠たちが三河からこの地に移り住んで善徳寺の壇家となったという。

　中原御殿は明暦三年（1657）に江戸に移送されたため取り払われたのだが、その裏門（冠木門）はこの善徳寺に移築された。それが今でも善徳寺の山門として残っているのである。唯一の中原御殿の遺構と言える。裏門だから、家康はここを潜ることはなかったかも知れない。

　重厚な茅葺き屋根だ。御殿の裏門として見劣りなどない。正面から見ると横の塀を突き抜けた松の木が斜めに伸びて山門の前を登っていく龍のよう。左側にはこの松を支える立派な添え木が二本すっと立っている。

　本堂はすっきりとした印象が残るが、柱などの木材には年月が深く刻まれている。

　本堂右手にはかなり広い墓地。左手には寺務所がある。寺務所の前にはいくつかの椅子が並べられており、寺務所の屋根が雨を凌いでくれるようである。そんな心遣いはありがたい。

山門を境内から眺めると、左に赤い服を着た六地蔵が並んでいる

本堂の蟇股は邪鬼か、だが愛らしい

［神奈川県平塚市南原3-2-7］

第百八十寺・善徳寺