ALSへのラジカット®(一般名:エダラボン)の経口薬(MT-1186)が厚生労働省に製造承認申請されたと最近発表がありました。ビタミンB12大量筋注療法のように却下されなければいいのですが、、、今回はラジカットについて調べたいと思います。
下記リブログさせていただいた内容ではヨーロッパでの推奨使用はなく、アメリカでは年間約1700万円かかるなど、大変勉強になりました。
他の情報もあわせると日本、韓国、アメリカ、最近ではカナダもエダラボンが認可されています。
ラジカット®
<歴史>
2001年に急性期脳梗塞で保険適応が通りました。海外で使用されていた薬剤が国内へ導入されることもありますが、ラジカットは世界中でも日本で初めて導入された薬です。
<機序>
フリーラジカルを除去し、神経細胞死に関わる酸化ストレスを打ち消す薬です。
<副作用>
腎障害で使用すると腎障害が増悪するため禁忌。大きな声で言えませんが透析まで言っている場合は使用されているケースもありました(腎障害がこれ以上すすまないから)。通常採血では腎障害では尿素窒素(BUN)とクレアチニン(Cre)が上昇しますが、進行期のALS患者さんでは筋肉量が少ないため腎障害があっても採血でCreが低値のままなのであてになりません。そのためBUNのみで腎障害を評価します(医療者側からみると脱水や消化管出血でもBUNだけ上昇するため区別がつきませんので要注意)。まあ、シスタチンCを測定すればわかりますが特定の機関へ提出するため時間がかかります。
次にフリーラジカルというのは細菌死滅過程でも必要なため、細菌感染時は腎障害の増悪をきたしやすく慎重投与になっています。
<半減期>
α相0.3時間、β2.3時間と血中半減期は短いです。当時の製薬会社営業マンの説明では20分以内で投与すると腎障害リスクが高まり、30分以上かかると効果が薄れてくると言っていました(伝聞エビデンス不明)
<後発品>
エダラボン(一般名と同じ)が登場していますが保険適応は急性期脳梗塞のみです。
<ALSへのラジカット®試験、文献1>
2011年~2014年国内でプラセボとの二重盲検(医師も患者も本物か偽物の薬かわからない状態にした試験。治験管理者だけわかるという仕組み)
<患者選択基準>
Probable ALS以上
%FVC 80以上
発症2年以内
20~75歳
<経過中の中止基準>
気管切開が必要
%FVC 50以下かつPaCO2 45以上
腎障害(CCr50ml/m以下)
<ALS患者選択>
ラジカット群:69名、プラセボ群:68名
両群とも家族性ALS3%以下、リルゾール内服91%
<治験内容>
1クール=28日間
第1クール14日連続で60mg/日点滴
第2~6クール以降10日間同量投与
<結果>
ALSFRS-R(満点48点。数値が高いほど良い)→ALSガイドライン2013参照
上記6クール(28日x6)で
ラジカット群-5.01点
プラセボ群-7.50点
ということでラジカット群では進行抑制が認められたため国内で保険が認可されました。
<管理人考察>
ALSは遺伝子異常の多様性から様々なタイプがありますが、SOD(Superoxide dismutase=活性酸素除去)1変異のように酸化ストレスに弱いタイプにはラジカットがよくききそうです。逆に酸化ストレスが関係ないような例ではあまり効かないのではないでしょうか。
また点滴の繰り返しにより末梢の点滴が確保しにくいケースでは、抗がん剤と同様で右胸部にCVポートを留置して簡単に点滴する方法があります(実際にいらっしゃいます)。もし針を刺す時痛みがある人は氷で1分くらい冷やしてから針を刺すと痛みを感じません(あまり行われていませんが有効です)。
問題はラジカット®の中止時期です。気管切開したらリルゾール同様中止しなければいけませんが実臨床では患者さんの治療法がなくなってしまうためどちらの薬剤も止め時に大変迷います。呼吸筋麻痺型では四肢の筋量がまだまだ残っていますので結構点滴をしてしまっています。
ちなみに大学病院では困難だと思いますが中規模病院では訪問看護で家で点滴しているところもあります(投与時間が短い)。
文献1、Lancet Neurol. 2017 Jul;16(7):505-512
Safety and efficacy of edaravone in well defined patients with amyotrophic lateral sclerosis: a randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Writing Group; Edaravone (MCI-186) ALS 19 Study Group
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