赤:略語、青:重要点
雑誌:J Cell Physiol. 2008 Nov;217(2):301-6.
タイトル:What do we know about serotonin?
(セロトニンについては我々が知っていること)
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ふと疑問に思いましたが、上位運動ニューロン<下位運動ニューロンが興奮して線維束性収縮(fasciculation、以下fas)が生じると考えてきましたが、筋細胞自体の易興奮性の要素はあまり述べられていません。筋炎などではfasがみられないこともあり、ALSではfasはやはり運動ニューロンの影響のみと考えられます。しかし筋弛緩作用を有するベンゾジアゼピンの離脱や原因不明のBFSなどでは筋自体の興奮の可能性も否定しきれません。
セロトニンに限った話ですが、上記文献によると骨格筋自体にセロトニンの受容体(5HT1~7)は存在しません(下記表、上記文献より)。ちなみに筋肉は平滑筋(血管や消化管に存在、ALSで障害されない)、骨格筋(自分で動かせる筋肉、ALSで障害される)、心筋(自分で動かせない、ALSで障害されない)にわけられます。骨格筋と心筋をあわせて横紋筋と呼びます。
セロトニン症候群(セロトニン過剰状態)ではfasや筋痙攣が観察されます(下記表2。ブログ2記事より引用)。また選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の飲み始めや急激な濃度上昇時なども下記末梢運動神経系に存在するセロトニン刺激によりfasや筋痙攣のみが新規に観察されることも稀にあります。その機序としてはやはり下位>上位運動ニューロンの興奮によると考えられます。
<表1、J Cell Physiol. 2008 Nov;217(2):301-6.日本血栓止血学会記載より>
<表2、J Neurol Neurosurg Psychiatry 2017; 88: 773-779より>
【線維束性収縮の原因】
運動ニューロン疾患(MND)
脊髄性筋萎縮症(SMAとSBMA)
脊髄小脳変性症3(SCA3=Machado-Joseph病)
ポリオ
ヘルペスウイルス感染後
<末梢神経病変>
多巣性運動ニューロパチー(MMN)
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)
他の免疫介在性末梢神経障害
シャールコー・マリー・トゥース(CMT)
外傷性末梢神経障害
<運動神経根と腕神経叢病変>
炎症性
放射線治療副作用による腕神経叢炎
<脊髄病変>
神経梅毒
頚部脊柱管狭窄症
放射線治療副作用による脊髄炎
帯状疱疹や狂犬病等によるウイルス性脊髄炎
<代謝性病変>
低カルシウム
低マグネシウム
甲状腺機能亢進症
<末梢運動神経の過興奮>
Benign fasciculation syndrome
Cramp-fasciculation syndrome
運動後fasciculation
<薬剤性>
カフェイン、コリン刺激、アンフェタミン、抗ヒスタミン剤、セロトニン、交感神経緊張をきたす薬剤、ベンゾジアゼピン離脱期
<毒物>
ヘビ、クモ、サソリ刺されなどによるコリンブロック
<自己免疫疾患>
VGKC抗体(脳炎+末梢神経運動興奮)
神経ミオトニア
<筋炎>
封入体筋炎(70人中2人のみfas観察)
