18カ月前、政治刷新と変革を求める草の根運動に支えられて誕生したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は今、別の形の変革を求める草の根運動による激しい抵抗に直面しています。

来年からの政府の燃料税引き上げに対する抗議運動は、ソーシャル・メディア上で始まり、3週間前に路上での大規模な抗議デモに発展して以降、フランス各地で激しい衝突を引き起こしています。

 

就任当初は60%を超えていたマクロン大統領の支持率はいまや20%台にまで。

経済を立て直そうと、法人税を任期の5年をかけて減らしていくと約束しました。

企業が儲かれば給料も増えるという筋書きだが、国民は時間がかかると困惑しました。

次に出したのが富裕税の一部廃止です。

富裕層から高い税金を取るよりも投資に回せば産業が生まれ雇用創出につながるという考えだが「金持ちばかり優遇」という批判もあります。

 

所得再分配を重視するあまり、フランスの歳出規模は先進国で最も高く、膨張する政府債務の大きさも問題視されてきました。

こうした長年の課題に対処するため、マクロン大統領は2017年5月の就任以来、矢継ぎ早に改革を実行してきました。

就任直後には、労働組合の抵抗を押し切って、企業の解雇手続きの簡素化や不当解雇補償額の上限設定などの労働市場改革を断行しました。

予算編成でも、法人税率の段階的な引き下げ、金融資産にかかわる富裕税の廃止、投資やイノベーションの促進、デジタル経済化の推進など、企業活力の活性化に重点を置いています。

欧州連合(EU)レベルでの改革にも意欲をみせるマクロン大統領は、改革実行の旗振り役となり、ほかのEU加盟国の協力を取り付けるために、自ら範を示そうとしています。

財政赤字をGDP(国内総生産)の3%以下にするEUの財政規律の達成を重視しました。

各省予算の一律削減や赤字を垂れ流す国有鉄道にメスを入れるなど、なりふり構わぬ歳出削減に取り組んでいます。

マクロン大統領は地球温暖化対策にも力を入れ、著名な環境活動家であるニコラ・ユロ氏を環境相に任命(同氏は環境政策をめぐる政権との方針の食い違いを理由に今年8月に辞任)、パリ協定の目標達成に向け2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売を終了するなどの政策方針を掲げています。

 

さらにガソリンなどにかかる燃料税の引き上げを打ち出しました。

人々がマイカー利用を控えるようになれば地球温暖化対策になるが、いまの車社会ではガソリン代やディーゼル燃料の価格は市民生活に直結します。

ただでさえ「不公平な負担を強いられている」と感じる市民の家計を直撃することになります。

たまっていた不満に火が着いて大規模な抗議デモにつながりました。

 

今回のデモのきっかけとなった燃料税の引き上げも、こうした目標達成に向けた措置の一環ですが、フランスでは低所得層を中心に燃料費の安いディーゼル車の普及率が高く、国民の不満が爆発する事態を招きました。

 

マクロン大統領の就任以降、対内直接投資やスタートアップの増加など、改革の萌芽も少なからずみられます。

就任時に9.5%だったフランスの失業率は8.9%まで低下しました。

ですが、多くの国民は改革の成果以上に痛みを感じています。

企業活力の回復を重視した改革メニューは「富裕層優遇」と非難され、スピード重視の強引な改革手法は「国民の声に耳を傾けない」として批判されています。

そこに、エリート色の抜けないマクロン大統領自身に対する「傲慢」との批判や、大統領の警護責任者によるデモ参加者(今回のではない)への暴行疑惑なども加わり、国民の不満に火がつきました。
 

フランスの地方では深刻な問題になっています。

財政赤字削減の一環で、税務署閉鎖&無人駅という事態が起こっています。

病院の産科まで閉鎖しています。

マクロン大統領は、医師や看護師に地方で働くよう呼びかけているが、うまくいっていません。

地方の怒りに大統領は「ともに難局を乗り越えよう」と呼びかけていますが、これも怒りを買ったままです。

 

格差への不満・怒りは、ゴーン前会長にも及んでいます。

ゴーン前会長の見方をするなと、フランスでもより厳しく対応するようにとの国民の意見が多いです。


マクロン大統領の政策が国民の怒りを買ってしまったことは「EUの結束」にも影を落としています。

イギリスはEUから離脱しようとしているし、イタリアはEUに批判的な政権が誕生しました。

マクロン大統領は、欧州を1つにまとめる旗振り役です。

足元の国民の怒りを鎮めなければ、「EUの結束」という夢の実現は遠のくばかりです。

 

 

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