ロシア大統領選が17日開票され、プーチン大統領(71)の通算5選の当選が確実となった。タス通信が出口調査の結果を伝えた。ウクライナ軍事侵攻が長期化する中、前線での優勢や国内の経済成長などを主張し、支持基盤である保守層からの支持を集めた。任期は2030年までの6年間となる。

政府系の調査機関の出口調査結果によると、プーチン氏の得票率は約88%となっている。投票率は73%を上回ったもようだ。18年の前回大統領選でのプーチン氏の得票率は76%で、投票率は67%だった。いずれも今回の選挙結果が上回っている。

今回の大統領選はプーチン氏に加え、政党「新しい人々」のダワンコフ下院副議長(40)、ロシア共産党のハリトノフ下院議員(75)、自由民主党のスルツキー党首(56)の計4人が立候補した。

ウクライナ侵攻に明確に反対するボリス・ナデジディン元下院議員らの立候補は認められず、同氏の最高裁への提訴は棄却された。立候補者は過去最少の4人で、前回18年の大統領選から半減した。実質的な対立候補を排除することで、政権は「圧勝」を国内外にアピールする狙いとみられる。

北極圏の刑務所で獄死したロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の妻ユリア氏はSNS(交流サイト)で投票最終日の17日正午に投票所に行き、プーチン氏以外の候補に投票するか、投票用紙を破棄するよう国民に呼びかけた。モスクワなど各地の投票所では抗議行動に参加する有権者の行列ができた。

独立系人権団体「OVDインフォ」は17日、大統領選に関連して国内20都市で80人が拘束されたと明らかにした。

今回の大統領選では侵攻後の22年秋に一方的に併合したウクライナ東・南部4州でも大統領選の投票を実施した。独立系メディアはロシアによる併合地域では投票担当者が武装した兵士を伴って住民の自宅を訪問し投票を強制しているなどと報じた。併合地域での選挙実施について、ウクライナや日米など55カ国以上が15日、国連安全保障理事会の場でロシアを非難する共同声明を発表した。

プーチン氏は4期目、22年2月にウクライナ領内の親ロシア派勢力の保護などを名目に侵攻を開始した。主要7カ国(G7)などはロシアに相次ぎ経済・金融制裁を科し、西側諸国との対外関係は大きく冷え込んだ。

ロシアは中国やインドなど対ロ制裁を科していない国との貿易を強化し、制裁の影響の抑制に努めた。ロシアの23年の国内総生産(GDP、速報値)は22年に比べて3.6%増加し、2年ぶりのプラス成長となった。ウクライナ侵攻の長期化で軍需関連を中心とした製造業がけん引した。

政権による情報統制や内政の安定などを背景に、侵攻後にプーチン氏の支持率は8割台に上昇し足元でも高支持率が続く。

プーチン氏は5月の就任式でロシアの次期大統領に正式に就く。

ウラジーミル・プーチン氏 1952年旧ソ連北西部レニングラード(現サンクトペテルブルク)生まれ。レニングラード大学法学部を卒業後、ソ連国家保安委員会(KGB)に入り、旧東ドイツで勤務した。99年にエリツィン大統領に後継に指名されて大統領代行となり、2000年の大統領選で当選した。

08年に連続3選を禁じた憲法に従って大統領の職をメドベージェフ現首相に譲り、自らは首相に転じた。メドベージェフ氏との二頭体制を経て12年に大統領に復帰した。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR172W70X10C24A3000000/