ゲートの内側の少女「ママ、どうして外側の人達と話しちゃだめなの?」
ママ「外側の人達はね、TPPが始まった時に努力ができなかった人達なのよ。資本主義社会ではお金の勉強を何よりも優先しなさいって先生も教えてくれるでしょ?」
少女「だけど、外側のおじさんはTPPは不平等条約だって言ってたよ。」
ママ「あら、世の中なんて全てが不平等なものなのよ。例えば、イケメンのタケシ君が一緒に動物園に行こうって誘ってくれたらドキドキして夜も眠れなくでしょう。だけど、ブサメンのサトシ君が同じ事を言ったらセクハラだって怒るでしょ?」
少女「……うん。」
ママ「だからね、サトシ君は自分の容姿の悪さを補うためになんらかの努力をしないとダメなの。タケシ君は何もしなくてもあなたを動物園に誘えるの。これって不平等でしょ?」
少女「……うん。なんか違う気がするけど、同じような気もする。世の中って不平等なんだね。」
ゲートの外側:NEO TOKYO CITY
初老の男K「あぁ、今日も頑張ってアルミ缶をたくさん集めたな。ワンカップ大関がまいうー。」
若者「あ、Kさん。また、よっちゃんイカをつまみに安酒煽ってるんですか。好きですね。今日は冷えるんで僕もたき火にあたっていきますね。」
K「あぁ。よっちゃんイカつまむ?」
若者「いらないっす。てか、フードスタンプの飯は食わないんですか?」
K「だって、フードスタンプってマルドナルドとかの米国系企業の飯しか食えないじゃないか。あんな油っこいもんばっか毎日食えないよ。体に悪そうだし。」
若者「毎日駄菓子と大関も体に悪そうですけどね。」
K「まあな。それにしても、昔は毎日パチンコ打ってるだけで普通のメシが食えたんだけどなぁ。」
若者「まーた昔話ですか。聞き飽きましたよ。ホールやメーカーのメインバンクがいつの間にか米国に乗っ取られたとこから始まってって話でしょ。」
K「ああ。ISD条項だっけか。あれのせいでパチンコに設定S……セーフって意味らしいんだが、そんなものが設けられて以来、パチンコで食ってる人間は絶滅しちまったな。」
若者「ISD条項は今でも生きてますよね。投資家の保護が最優先で他国の法律だのなんだのは全て無効。おかげで投資家への利回りを確保できそうにない場合は設定Sの使用が認められるようになったうえに日本政府は3兆円の賠償金を払ったって話ですよね。」
K「設定Sは俺達にとっては死という意味のSだったよ。」
若者「保通協だのなんだのといった天下り団体も、米国の投資家達が新しい機関を作ってそこに優秀な官僚を高給で集めたおかげで従来の天下り団体は吸収合併されちゃったんですよね。まぁ、他の分野でも同じですけど、奴らは金玉を握るのがうまいですね。さすがはゲイが結婚できる国ですよね。」
K「それにしても、俺みたいにブラブラ生きてた人間が落ちぶれちまうのはしょうがないと思うよ。だけどさ、TPP以来かなりの数の人間が落ちぶれてしまった。昔、寄稿してた雑誌で働いていた人達も今は殆どがフードスタンプで暮らしているんだとよ。」
若者「あー、出版も利益は大半がアマゾンに入るシステムになっちゃいましたもんね。最初は利益の55%をよこせって言われて反発していたんですよね。TPPが始まってから巧みに大手出版社の資本を握られてしまって、そんなかわいいものじゃ済まなくなってしまったんですよね。」
K「うん。あいつらの目的は日本を経済植民地にする事だった。シナリオは最初から用意されてあった。日本では何もわからない状態だった。これで勝てるわけないよね。」
若者「はーあ。アンタはTPPの交渉に入る前に大人だったんだから、なんとかしてくれりゃ良かったんですよ。なんかしたんですか?」
K「大喜びで透けパン刑事打ってた……。」
若者「今と変わらずダメ人間ですね。ま、頭の良い奴は尻尾振って自分達だけが助かる方向に動いてたんだからアンタが頑張ったところで何も変わっちゃいないでしょうけどね。」
K「ダメ人間ですまんね。当時は確か……中野剛志さんだっけかな。TV局が用意したミスリードもキッチリと指摘して、TPPをわかりやすく話してくれてた教授さんもいたんだけどな。ほとんどの大人達は自分の生活に精一杯で、ただ傍観する事しかできなかったんだよ。」
若者「そうすか。暖まったし、そろそろ帰りますわ。たき火でダンボールのおうち燃やさないように気をつけてくださいね!」