初めての抜けた前歯を恐る恐る見つめる兄ちゃんもうすぐ五歳


 仕事中、携帯が鳴った。ママからの電話だ。こういう時は保育園からの呼び出しと、ほぼ決まっている。
「兄ちゃんがドアに衝突して、前歯が一本グラグラだって!」
ほら来た。
4歳で歯抜けとは不憫だな…)
と思いつつ、職場を出て足早に保育園へ向かった。

 歯医者に連れて行くと、すぐにレントゲンを撮られた。その画像を見て、
「あれ、大人の歯が顔をのぞかせてますよ」
と先生。永久歯に押されて早晩抜けるはずの乳歯が傾いただけらしい。
「早くて5歳くらいで生え替わり始めるけど、それにしても早いねえ~」
と言われた。

 一週間後、自宅で食事中に、
「あっ、歯が取れた!」
みんな一斉に兄ちゃんの口の中をのぞき込む。下の前歯がきれいに抜けていた。その抜け跡から永久歯がたけのこのように頭を出している。兄ちゃんは初めて手にした自分の歯を恐る恐る見つめていた。

 ママは、
「記念にとっておくね♪」
と、歯を大切そうに仕舞い込んだ。パパはパパで、
「写真を撮ろう!」
とカメラを向ける。兄ちゃんも気を取り直して、カメラに向かって「ニイ~」と歯並びを見せる。家族みんな、兄ちゃんの歯が抜けたことを喜んだ。

 でも、4歳で「大人の歯」だなんて、パパはちょっぴり寂しいよ…。