モダンスイマーズ「雨とベンツと国道と私」を観に行きました。
〈感想〉
絶対的な正しさも、絶対的な悪も無い。
みんなどこかおかしくて狂ってる。
そんな世界が、とてつもなく愛おしい。
変わろうともがく人の姿は健気で美しささえ感じる。
完全に別人にはなれないし、他の誰かみたいにもなれない。だって、貴方はその人じゃないから。
でもほんのちょっと、今までよりも良い自分に、なりたい自分になることなら、できるのかもしれない。
マウントを取られた小林さんが、さらに弱い人にマウントを取る負の連鎖は、見ていてヒリヒリする。
ステージ上は、がらんとした空間がある。
両端に椅子や机、傘やペットボトルが置かれている。
端で役者さんはシーンに合わせて衣装を変え、小道具を持ち変えて中央へ出て演じる。
⚠️以下はネタバレが含まれます。
坂根さんも才谷さんも、過去の自分から変わろうとしている。
五味さんだけがいつまでもメンヘラ状態から変わらないな、と思ったら、最後に変わった。
トラウマだったはずの監督の暴言を、そのまま叫ぶ。
「お前のゴタクなんか、どうでも良い」「できないなら役者やめちまえ」
これは、彼女でさえも坂根さんの発言に納得できる部分があったという事だろう。
「ガンジーは言った、許すことは強さだと。許さないことは暴力ではないのか?」
どちらも「強さ」なんだ。ベクトルが違うだけ。
坂根さんにも言い分がある。
なあなあで妥協の産物みたいなものづくりはしたくない。親しい仲でも、仕事は厳しくピリッとやるべきだと。
彼は先輩たちがやったことを、そのまま持ち込んでいた。オンは厳しく、オフは飲み会で励ます。昭和だなぁ。やり方が古いのだ。時代は変わったのに順応できていない。
ただ、彼の暴言や暴力が絶望的に酷いと思わなかったのは、私が生きた時代のせい。
前時代のスタイルで行く坂根さんのような人がまだ残っていた。
殴られても蹴られても、山口さんは付いてきている。彼らの関係性の中で成立していたのだろう。
これを、復讐なのか何なのか、五味さんは破壊する。
山口さんが暴言を録音していたことを告げ口するし、彼が好きだった宮本さんのことも、「宮本さんはあなたのことをキモいって思ってた」と、グサグサ…。
つまり、被害者に見える五味さんも、簡単に加害者になってしまう。
今を生きる人たちの、加害性と正義の危うさが、これでもかというほど濃く、かつ、さりげなく描かれていたと思う。
(了)
タイトルは、登場人物たちの過去の象徴だった。
雨は五味さん、ベンツは坂根さん、国道は才谷さん。
終演後の面会が可能だったようで、トイレから出たら役者さんがみんなロビーにいた。
作・演出:#蓬莱竜太 さん
出演:#古山憲太郎 さん #津村知与支 さん #小椋毅 さん #生越千晴 さん #西條義将 さん #山中志歩 さん #名村辰 さん #小林さやか さん
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