「Medicine メディスン」を観に行きました。


劇場前に長蛇の列が出来ていた。当日券予約のお客さんだった。


場内に入ると、古い学校のレクリエーションルームのようなセット。

天井付近に「congratulations! 」の横断幕。誰かのお祝いらしいが、風船が雑に転がっていて、どうやらパーティーは終わっている。

壁の時計は12時43分を指して動いている。この時計で1時に開演するようだ。

ステージ奥にあるドアは、廊下から薄明かりが漏れて来ている。

昼なのか、夜なのか?


冒頭。

廊下のドアから田中圭さんが入ってくる。

パジャマ姿で、ハンガーにかけた着替えを手にしている。

その所作と、スピーカーから聞こえる「気分はどうかな?」等という質問のやり取りから、彼は入院患者で、おそらくここは精神病院なのだと分かる。


そして、彼がブースのような所に入ってヘッドフォンを付けマイクに向かうと、老夫のマスクを被った人物が入ってくる。

これが、つけ眉毛が取れなくなったメアリー。

後方の小部屋のブラインドが上がると、エビがいる(ロブスターの着ぐるみを着たメアリー)。

二人のメアリーは俳優で、「case John Kane」と書かれた台本(ほぼカルテ?)を持っている。


⚠️以下はネタバレが含まれます。

 


不条理劇のテイストだった。


二人のメアリーは、どうやら病院側に頼まれ(外で生きる意欲を削いで、ここに閉じ込めておくため)、ジョンのトラウマを再現する。

繰り返される追体験に、ジョンの心はえぐられていく。


そのうち、眉毛のメアリーは「これは、ジョンのためにならないのではないか」と疑問を持ち、台本に無い「ありのままで良い、愛している」という言葉をかけて、彼を救おうとする。

しかし、役者としての野心に燃えるもう1人のメアリーは、自分のキャリアのために強引に最後まで台本通りに演じ、ジョンの心は崩壊する。


やり切ったロブスターのメアリーは去っていく。

残ったメアリーは、ジョンに手を差し伸べる。

「誰もこの芝居を聞いていない(病院の人でさえ)」と気付いたジョンだが、メアリーに向かって、子供の頃に作った詩を朗読する。

初めての観客。拍手するメアリー。


「私にいてほしい?ジョン」

「うん、いられるだけ。メアリー」

ジョンは、劇中の役名セーラでもバレリーでもなく、本名のメアリーと呼んだ。

二人は腰掛けて、ゆっくりと寄り添った。

(了)


壁時計で2時15分から25分あたりの芝居の迫力が凄まじかった。

極限まで追い詰めていくエビのメアリー。

繰り返す耳鳴りのようなキーンという雑音の中、ジョンの断末魔のような叫び。

ジョンがそれまで語ってきた、赤ん坊時代、13歳?、19歳のときのトラウマが、時系列ごちゃごちゃになって、絶叫にも近い状態でほとばしる。

富山えり子さんと田中圭さんがすごかった。


ジョンが倒れた後、スピーカーから流れてくる「気分はどうかな?」という質問に答える彼の声が、冒頭とは変わっている(田中圭さんの声ではない。60代くらい?)。

本当のジョンは、実はもっと歳を取っているのかもしれない。


メアリーたちがミュージカルのTシャツを着ていたのが面白かった。

眉毛のメアリーはレ・ミゼ。エビのメアリーはWicked。


田中圭さん、色白で肌キレイだったなー。


作:エンダ・ウォルシュ

翻訳:#小宮山智津子 さん

演出:#白井晃 さん


出演:#田中圭 さん #奈緒 さん #富山えり子 さん #荒井康太 さん(Drs)


#メディスン

#舞台観劇

#観劇記録