公式アンケートに書いた感想
カムフロムアウェイが終わってしまった。
公式アンケートに書いた感想をここにも残しておく。
私がニューファンドランド島を訪れたのは今から20年ほど前、このミュージカルが生まれるよりも前のことだった。
近所のプリンスエドワード島は、赤毛のアン効果で日本人観光客も多かったが、ニューファンドランドでは全く見ない。
アフリカ系も、アジア系も、ヒスパニック系も、ほとんど見かけなかった。
だから、世界中から見たこともない民族の人々が一斉に降り立ったことは、島の人たちにとって天地がひっくり返るくらいの衝撃的な出来事だったと想像する。
例えるなら、明治時代の日本の田舎に外国の人たちがたくさんやって来るような?
そう思ったら、ああ日本にもカムフロムアウェイはあったじゃないかと思い至った。
エルトゥールル号遭難事件。
このときも、言葉が全く通じない、見たこともない人々に、食べ物、着る物、寝床を用意した村の人々がいた。
洋の東西を問わず、時代を問わず、「あなたもきっとそうする」人はたしかに存在する。
ガンダーで起きたことは奇跡ではなくて、地球上のどこかで巡り起こる普通の優しい出来事の一つなのかもしれない。
その一方で、見落としてはならない小さなエピソードがあった。
ガンダーから離陸の際、ムスリムを見た客室乗務員の一人が「同じ飛行機には乗れない」と乗務を拒否したこと。
世の中の全ての人が同じように寛容になれるわけではない。その人なりの事情だってあるのだろう。
大きな温かいテーマの影に、分かり合えないやるせなさや寂しさも、同時に描かれていたと思う。
以下は振り返って追記。
この作品のキャスト発表を聞いたとき、驚いた人は大勢いたと思う。誰もがミュージカルで主役を張れる人たち。
このアンケート↓を書いてホリプロに送ったのは昨年末か今年の年始だった。
オリジナル作品は観ていないが、期待していたのがよく分かる。
一方で、「船頭多くして船山に登る」ではないが、こんな豪華なメンバーを集めて、果たしてうまくまとまるのか?と思ったりした。
しかし蓋を開けてみれば、主役級の人たちがアンサンブルをこなし、ソロではなくハーモニーを奏で、めったに見られないコラボレーションだった。
おまけにチームワークがとても良く、キャストは皆仲が良かったと聞く。
緻密で繊細な構成を、見事な完成度でやってのけたのは、彼らのチーム力の成果。
もしかすると、カリスマ性のある主役を避け、チームで作品を創ることに長けた主役級たちを厳選してキャスティングしたのかもしれない。
そういう意味で、この作品はチームで創る演劇の力をひしひしと感じた。
非常に貴重な公演を目撃したと思う。
今後別キャストで再演されたとしても、これほどのチームの一体感がまた発揮されるかは分からない。
それくらい、この日本初演チームは素晴らしかった。
記憶に残る作品が、また一つ生まれた。
Tonight, we honor what was lost, but we also commemorate what we found.
− ガンダー町長の最後のセリフ