シス・カンパニー公演「カラカラ天気と五人の紳士」を観に行きました。
場内に入ると、ステージには地下鉄のホーム。
再現度が高くて、ホントに現在のどこかの駅をコピーしたかのよう。
モデルは東京メトロの駅かな🤔
原作初演は1992年なので、このアレンジは加藤拓也さんによるものだろう。
ホームの柱には、上に抜けるハシゴがかかっている。これは別役実作品の電柱を代替しているんだと、後から気付く。
シス・カンパニーが日本の有名作品を上演。このチョイスは少々意外。少なくとも最近は無かった。
そして演出が加藤拓也さん。この組み合わせは、不条理 × 不穏?
開演10分前からベンチに腰掛けてビオラを弾く人が出現…。ホームレスのような身なり。曲も不協和音ふう。
開演3分前に客電が点灯する。明るい中でスタート。
たくさん笑った。
会話は不条理なんだけど、コントのような面白さ。
思い切り笑いに寄っていて(これはたぶんキャストの力)、不条理劇によくある、わけの分からない苦々しさや苛立ちみたいなものは全く感じない。
全員芝居が上手くて、恐れ入った。
⚠️以下はストーリーに触れています。
地下鉄ホームに棺桶を運び入れる男5人。
これから電車に乗って運ぶのだろうか…。
棺桶は懸賞で当てたもの。
これは「はずれ」の一番で、「当たり」の賞品は青酸カリ。棺桶だけ当たっても片手落ちだ、と思っている。
そのうち、これを使うために誰かが死ぬべきだと考え、最初に死ぬ人に棺桶を譲ると言う。
なんだか流れで死ぬ担当になった男は、棺桶のお礼に糸の切れた糸電話を渡す。
選ばれた男は死ぬことになっているが死ぬつもりはなく、この辺の意識のズレが会話のズレになっていて面白い🤣
棺桶を当てた男の発案で、電球を外してソケットに手を入れれば感電死するからと、試すことになる。
しかし、熱くて触れない。
「死ぬ気で触れ!死ぬんだから火傷なんて気にしなくて良い!」とむちゃくちゃな説得が始まる。
女二人が現れる。
敷物を敷いて、キャリーケースの中身を広げていく。
「虫干し」だと言う。顔をなぜか白塗りにしていく。
「死ぬんだから」
女たちが現れた頃、上手の電球が消えた。
死のうとした男が感電死のために外せ、と言われていた辺り。
これは…どういう意図なんだろう?
女たちは青酸カリの当選者。
ここで
・棺桶はあるが死ねない人
・青酸カリはあるが死んだ後の棺桶を持たない人
・毒はあるがカラカラ天気で飲む水が無い
という、突き詰めると何も起きない状況が生まれる。
ここで死ねないと悟った女たちは、カラカラ天気なのに傘を持って改札方面に飛び出して行く。
その後ラジオのニュースで、傘を持って特急電車に立ち向かって行ったことを知る。
ホームに残された五人の男たち。
自分たちは「何も成就しなかった」とうなだれていると、天井から糸が下りてくる。
「誰か蜘蛛を助けたか?」(芥川龍之介の蜘蛛の糸)
先が輪っかになっていたので、てっきり首吊り用の紐か?と思ったら、棺桶と交換した糸電話を繋ぐ。
(ここで糸電話が再登場とは…!)
向こうの相手に声をかけようとするが、別の男が止める。
「こちらが向こうを聞くものじゃない、向こうがこちらを聞くものだ」
「死のうとするんじゃなくて、死ぬのを待とう」
「待ってる気になってきた」
「待とう」
彼らはここで死を待つことにした。
もう棺桶の事は誰も気にしていない。どうでも良くなったのに、棺桶のための目的だった死が、棺桶と関係なく新たな目的になった。その死は…何のため?
(了)
18時開演とスタート時間が早い。
上演時間が長いのかと思ったら、70分ほどと短い。これなら19時開演でも良かったのでは?と思う。
作:#別役実
演出:#加藤拓也 さん
出演:#堤真一 さん #溝端淳平 さん #野間口徹 さん #小手伸也 さん #高田聖子 さん #中谷さとみ さん #藤井隆 さん
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