「GOOD -善き人-」を観に行きました。


当日券を求める人なのか、受付に行列が出来ていた。

しかし中に入るとガラガラ…。

ちょっと心配になったけど、開演前には1階はほぼ満席になっていた。

ロビーでリピーターチケットも売っていた。


緞帳の奥から管楽器の音がする。生演奏がある作品なのか!(知らなかった)


緞帳が上がると、真っ白いステージが現れる。目の前に佐藤隆太さんが立っていた。

ビビる。


上手奥にジャズバンド。

バンドの人たち。演奏もさることながら、早着替えでアンサンブルもこなす👏👏👏

バイオリンの人は楽器が弾ける俳優さん?最初はミュージシャンかと思ったら、1幕最後にけっこうな長台詞があって、きっと俳優さんなんだな、と思う。


主人公ジョンが時代に流され、長いものに巻かれていく様が描かれる。

重厚な作品。


床にはたくさんの立方体(四角柱?)が置かれている。

ステージ三方を囲む大きな白い壁が、床上1メートルくらいのところで浮いている(宙吊り)。一辺に一箇所ずつ、四角にくり抜かれていて、ちょうど開いたドアのようになっている。


ゲルマン人であるジョンの親友、精神科医モーリスはユダヤ人。彼は台頭するナチス党に危機感を持ちつつも、故郷ドイツを離れる決断ができずにいる。


ジョンがストレスを感じると、妄想の中にバンドが現れる。彼らが奏でる音楽としてストレスを具現化する。

ジョンの葛藤の一つはナチスに対して、もう一つは教え子の女学生アンとの関係に対して。

どこかにためらいを感じながら、両方とも突き進んでいく。


そして、急に始まるオペラ(ちょっと壊れた感じの)。これも、ジョンの精神状態を表している。


⚠️以下はストーリーに触れています。


 

ジョンはユダヤ人に対してネガティブな感情は無く、ナチスに違和感を持つが、義父の強いすすめもあって、党員になる。

ヒトラーの思想も、無理があるからそのうち失脚するだろうと、危機感はない。

流されるように、長いものに巻かれていく。


これも何だか勢いで、アンに想いを伝える。

アンも好意があったことから、ジョンの恋は簡単に成就する(ジョンには妻子がある。それだけ聞くとアレだけど、妻は精神疾患があると思われ、ワンオペ育児家事で家庭に安らぎは無い)。

(どうするんだ?これ…??)


党では温かく歓迎され、ジョンはさらに流されていく。

「君はSS(親衛隊)にふさわしい」だとか、書いた小説が「総統の目に留まった」とか言われ、高揚する。


「君たちが良心の呵責を感じるような命令は決して出さない」というヒトラーの宣言で、第1幕は終了。


第2幕。

ドイツは、もはやモーリスが脱出すらできない状況に陥っていた。


ジョンは、トマス・マンなどのナチスに反対していた作家の焚書を担当する。

その後、自らユダヤ人を卑下する論文を書いて読み上げる。読む間、焚書の時と同じパチパチと炎の音(音だけ)がしていた。

これは、ジョンの思考(自らの信念)の終焉を意味していたのかなと思う。


そして「水晶の夜」が始まる。

SSの同僚フレディは突撃命令に従って街へ、ジョンは辞令を受けシュレジエンへ向かう。

アウシュビッツへ…。

ジョンの手が震えている。

「何が起こっても私たちは善人」と送り出すアン。

フレディだって、禁忌となったジャズを隠れて愛好していたりして、人間味があって悪い人には見えなかったな…。


ここに来てジョンは、何が正しいかではなく、眼の前の現実が正しいものであると必死に正当化する。

自分が「善き人」であるために…。


アウシュビッツに到着すると、バンドの音楽が聴こえてくる。

「楽団は現実だった」

妄想ではなく、ユダヤ人が演奏していた。


ここで、三方を囲んでいた壁が天井へ上がる。

奥から瓦礫が現れ、ジョンがそこに向かって歩いて行く。

もう引き返すことのできない現実へ…。

この場所(アウシュビッツ)でこれから目にするであろう現実も、きっと必死に正当化するのだろう。

その時、彼の頭の中のバンドはどんな音楽を奏でるのだろうか?


作:C.P テイラー

演出:#長塚圭史 さん


出演:#佐藤隆太 さん #萩原聖人 さん #野波麻帆 さん #藤野涼子 さん #北川拓実 さん #佐々木春香 さん #金子岳憲 さん #片岡正二郎 さん #大堀こういち さん #那須佐代子 さん


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