パルコ・プロデュース2022「凍える」(2回目)を観に行きました。

 

2週間以上ぶりの「凍える」
極限までシンプルかつ無機質なセットが良い。

シリアルキラーのラルフはもちろん、全員が心に闇を抱えている。

冒頭、ラルフが水道で手を洗う。
汚れたジャケットを着ているのに、ポケットから取り出したのは、キレイな白いハンカチ。
おまけに、洗った手にローションを塗ってケアをする。
強烈な違和感…。

それは第2幕で分かる。
父親から「清潔にしろ」と怒鳴られて暴力をふるわれた。
偏った潔癖は、彼のトラウマの正体。

ローナの足跡。
前回は後方席でよく見えて、とても印象に残ったが、前方席だと見えにくい。

かつて、家庭の中で女王様のようだった姉イングリットは、妹ローナを失って変わった。
事件から20年。
イングリットは母ナンシーに言う(セリフは伝聞で、登場しない)。
「犯人を永遠に赦そう、ローナを手放してあげて。怒りを開放して心に空き地を作る。そこに新しいことを受け入れるの」
怒りに震える母は言う。
「アイツに会うときは銃を持っていく」
憎しみは変わらない。

ラルフのTATTOO。今日はよく見えた。
胸にあるのは「天使と悪魔の戦い」(チラ見えするのは背景の部分)
脚にあるのは「死神とナイフと太陽」(私には死神とナイフしか確認できず…)

アニータに「少女たちを殺して心が痛まないのか?」と問われると、ラルフは「残念なのは、少女を殺すことが犯罪であること」だと返す。
こちらも20年前と変わらない。

⚠️以下は少しネタバレが含まれます。



ナンシーはラルフと面会し「あなたを赦す」と言う。
しかし、彼に父親による虐待を思い出させ、「それと同じ痛みをローナも味わった、わかるだろう」と追い詰める。
赦すどころか…復讐しているようにしか見えない。
これにより、ナンシーは心が吹っ切れ、ラルフには良心が生まれる。

彼は自らの意志で、ナンシーに反省を込めた手紙を書く。
結局破いてしまうのは、芽生えた良心が完璧ではないからなのか、むしろ大きすぎたからなのか?

アニータは「成長段階で虐待を受けた人は大脳皮質が萎縮している」と言うのだが、それは治るのだろうか?
治らないなら、更生はあり得ないことになってしまう。
アニータはラルフに言う。
「その犯罪はあなたのせいではない」
「悪意による犯罪を罪とするなら、疾病による犯罪は症状」なのだと。

ラストまで見届けると、人は変わることができると分かる。
犯罪者が更生することも可能なのだろう。

そしてナンシーは、誰かの葬儀を見て「ステキ」と言う。
この人の場合は、変わったというより、壊れてしまったんじゃないかと疑いたくなる。
本人はラルフの顛末を「喜びたい」と言っているし、これからは幸せに生きていけるだろうけど、この感性はなんだか心配になる…。

作:ブライオニー・レイヴァリー
翻訳:#平川大作 さん
演出:#栗山民也 さん

出演:#坂本昌行 さん #長野里美 さん #鈴木杏 さん

#凍える
#舞台観劇
#観劇記録