舞台「夏の砂の上」(2回目)を観に行きました。

 

前回は扇風機の真正面(下手)、今回は上手側。バランス良くチケットが取れた。

田中圭さんはイケメンオーラを完全封印して、しょぼくれた青年になっている。
よくよく見ると、長いまつ毛は美しいし、パーツにイケメンの片鱗を感じるけど、丸まった背中や無気力で呆けた表情は、まるで別人。

前回見たけどスルーしてしまったこともいくつか。

⚠️以下はネタバレが含まれます。


冒頭で息子の位牌を持って出て行く、治の妻・恵子。
何があったかは分からないが、息子を亡くしてから関係が冷え切っていた様子が伺える。

治は、淡々としている。ほとんど喜怒哀楽が見えない。
そんな治が感情を見せたのは2回。

一度目は、帰ると言い張るジンノに「なんでね?」と大声を出した。
二度目は、恵子が着替えにやって来たとき、(客席からは見えない)奥の部屋で「ガチャン」と何かが割れる音がする。
その後の展開で、恵子の嫁入り道具である鏡台の鏡が割れた音だと分かる。
見えないが、おそらく治が恵子の前で割ったのだろう。

もしかすると、恵子が出ていく前の治は、こんな無気力ではなく、むしろ激昂するタイプの人間だったのかもしれない。
感情をぶつけたのが妻とその不倫相手。気付かないフリは、やはり無理をしていたから?

恵子はジンノと新しい地で暮らすことになり、息子の位牌を戻しに来る。
「あなたとは長らく一緒に暮らしたけど、全部忘れられそう」と清々しく告げる。

一方の治は「過去が思い出せない、だから忘れるものもない」と言い出す。
「アキオは本当にいたんだろうか?死んだのではなく、元からいなかったのではないか?」
息子と自分の存在も忘却の中にあることを知り、「私は何だったのか」と問う恵子。
今さっき「あなたとの日々を全部忘れられる」と嬉しそうに言ったのに、自分のことは忘れてほしくない、というのは都合が良すぎないか?

タテヤマ君の家に行って、彼のお母さんが作ってくれた夕飯を前に、食べずに飛び出して帰ってきた優子。
自分の母親からは、そんなご飯を作ってもらったことはないんだろう。
どこか醒めている彼女が泣いた。
(山田杏奈さんの目から涙が流れているのが見えた)

治が最後にかざす手。
これも今日は違う意味に思えた。
恵子にとっては、全く救いにならなかった治の存在。
しかし優子にとっては、不完全でボロボロでも、強い陽射しを避ける、その手のような存在になっていたのではないだろうか?

扇風機に紐が付いていた(家電売場みたいに)。
これならきっと上階からも風が見える。
扇風機のスイッチがついているときと、消えているときがある。
紐を付けたということは、そのときの扇風機の状態に意味があるんだろう。

カテコでニコッと笑う田中圭さん。
カワイイ笑顔になっていて、先ほどまでの青年とは別人…。

作:#松田正隆 さん
演出:#栗山民也 さん

出演:#田中圭 さん #西田尚美 さん #山田杏奈 さん #尾上寛之 さん #松岡依都美 さん #粕谷吉洋 さん #深谷美歩 さん #三村和敬 さん

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