そのがん遺伝子検査は、
複数の病院と製薬会社による研究プロジェクトだった。
患者の費用負担は実費のみ。
クローズ期限が迫っていたので、腫瘍内科の先生は急いでいた。
本来は事前に、プロジェクト参加に関する説明書を読むことになっていたが、
説明書を取り寄せる時間がなかったため、
当日遺伝子外来の前に、師長さんが読み合わせをしてくれることになった。

遺伝子外来の先生からの説明は、
・1割くらいゲノム検出できない人がいる
・検出できても、
治験に参加できる条件を満たしていない、
自分に合った治験が行われていない、
薬が高額である、
海外では使えても日本で使えない薬である、
などの理由で、治療までたどり着けるのは1割くらいである
・遺伝性がん(家族性腫瘍)かどうかは、血液を使う別の検査をして、そこでも検出された場合に確定する
(私が受ける遺伝子検査は、オペで取ったがん細胞を調べるものだった)

同意書にサインして、
遺伝子検査をお願いする。


自分の遺伝子変異を知りたいという気持ちが心の中を占めていた。
治験の可能性も示唆されていたにもかかわらず、
その場合のことまであまり考えずに、
遺伝子検査をお願いしてしまった。


2ヵ月近く経ったある日、
腫瘍内科の先生から電話が来る。
一部の結果が出て、
私の遺伝子変異に合う薬の治験がある、
というものだった。