下落時対応を考えるなら、結論はまずこれです。
底は「1点」で当てるものではなく、複数指標が同時に極端値を示し、その後に“悪材料への反応が鈍る”ことで確認するものです。特に今回のような原油急騰+海峡封鎖懸念+戦争悪化は、単なるバリュエーション調整ではなく、インフレ再加速→金利低下期待後退→グロース逆風が重なるので、通常の押し目より痛みが深くなりやすいです。直近もロイターは、ホルムズ海峡の混乱で油価急騰、株式の変動率上昇、アジアの輸入国に強い逆風が出ていると報じています。
まず覚えるべき「底打ち判定」の全体像
実務的には、次の4段階で見ます。
第1段階:恐怖の極大化(VIX、日本VI、信用評価率の悪化)
第2段階:投げ売りの進行(騰落レシオ低下、急落率拡大)
第3段階:悪材料継続でも下がらなくなる
第4段階:反発の質が変わる(1日反発ではなく、1週間〜1か月で高値・安値を切り上げる)
つまり、“高VIXだから即買い”ではなく、“高VIX+信用の悲観極大+悪材料鈍感化”のセットが大事です。
① 騰落レシオ
騰落レシオは、日本株全体がどれだけ広く売られているかを見る指標です。一般的な目安は、120%以上で過熱、70%以下で売られ過ぎです。松井証券も騰落レシオを「相場の体温計」と説明しており、岡三オンラインも東証プライムで120%以上は買われ過ぎ、70%以下は売られ過ぎという見方を紹介しています。大和の資料でも、25日騰落レシオの過去平均的なボトムは70%前後、ピークは120%前後とされています。
底打ちサインの実務目安
80〜70:かなり売られている
70割れ:短期的には底値圏候補
60台:かなり強い投げ売り
50台:セリングクライマックス級のことが多い
ただし、これだけでは不十分です。
本当に買いやすいのは、70割れ後に指数が安値更新しても騰落レシオが改善し始める場面です。これは「下げているのに内部は悪化していない」状態で、底入れの質が高いです。
1か月後の見方
70割れ直後はリバウンドしやすいですが、地政学+原油ショック型では1回の自律反発で終わることも多いです。騰落レシオが100前後へ戻るのに、指数が前回高値を抜けないなら、戻り売り相場の可能性が高いです。これは後述のVIXや信用評価率と合わせて見ます。
② 日本とアメリカのVIX
米国VIXはCboeのボラティリティ指数、日本ではJPXの日経平均VIが近い役割です。JPXは、日経平均VIについて25以上なら警戒感が高まっている目安と明記しています。
米国VIXの目安
20以下:平常〜やや楽観
20台後半:警戒
30超:明確なリスクオフ
40超:投げ売りが進みやすい
50超:パニック圏、底値候補を探し始める水準
80前後:歴史的ショック級
実例として、2020年3月のコロナ急落ではVIXが80超まで上がり、その後S&P500は大きく反転しました。FOMC議事録でも2018年2月のVIXショック時にVIXが**50%**に達したことが記録されています。Reutersも2020年のような急落後にはVIXが80超まで上がったと振り返っています。
日本VIの目安
20以下:落ち着き
25超:JPX基準で警戒感高まり
30〜35:かなり不安定
40超:日本株もパニック域を意識
50超:かなり強い投げ売り
60超:歴史的ショック級に近い
JPXの資料では、2022年2月のロシア・ウクライナ、2018年2月のVIXショック、2020年のコロナショックで日経平均VIが大きく跳ねたことが示されています。直近の2026年3月4日にも、日経平均VIは一時64.21、14時時点で56.30まで上昇しており、足元が平時ではないことが分かります。
底打ちサイン
VIXや日経平均VIが極端に高い
その翌日以降、悪材料が続いてもVIXが切り下がる
株価が安値更新しても、VIX高値は更新しない
これがかなり重要です。
価格の安値更新より、恐怖指数の高値更新が止まる方が先行指標になりやすいです。
1か月後の推移
VIX 30台で止まる急落:1か月後にかなり戻しやすい
VIX 40〜50台:1か月後は戻るが、半値戻し止まりも多い
VIX 80級:底打ち後の初動反発は強いが、値動きは乱高下しやすい
③ 松井の信用評価率・トレーダーズWeb
これは日本株で非常に使いやすいです。松井証券は、信用評価損益率について通常は0%〜-20%で推移し、-20%を下回ると追証が発生する水準、-20%前後で底入れの目安、0%に近づくと天井圏と説明しています。トレーダーズWebも、信用評価損益率を相場の天井と底入れを見る代表指標として解説しています。
底打ちサインの実務目安
-10%前後:まだ普通
-15%前後:かなり痛んでいる
-20%前後:底打ち候補
-20%割れ:追証・投げ売り圧力が強く、かなり良い逆張り候補
-25%以下:歴史的にはかなり強い悲観
特に良いのは、
指数がまだ弱いのに、信用評価損益率がこれ以上悪化しなくなる局面です。
これは「売りたい人がかなり売った」可能性を示します。
1か月後の見方
-20%前後で反転し始めると、日本株は1〜4週間でかなり戻すことが多い
ただし、原油高が長引き企業業績懸念に移ると、戻りはTOPIX大型中心で、グロース・信用銘柄の戻りは鈍くなりやすい
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業績が無傷で、金利ショックだけ
→ かなり良い押し目候補
業績鈍化+高PER修正
→ まだ中間点の可能性
原油高で再インフレ→金利高止まり
→ グロースはもう一段下もあり得る
底打ちサイン
Nasdaqやグロース指数が安値更新しても、VIXが高値更新しない
金利上昇が止まる
原油がピークアウトする
主力大型グロースが「決算無傷」で売られなくなる
1か月後の目安
25%下落後の1か月は、最初の急反発が最も取りやすい期間
ただし、原油高と金利高が続くなら、1か月後は戻り売りで再下落も普通にある
⑥ 原因が「石油」「海峡封鎖」「戦争悪化」の場合
この原因は、株式市場にとってかなり厄介です。
なぜなら、悪材料が企業収益の割引率にも、実体経済にも効くからです。Reutersは、ホルムズ海峡が世界の原油・LNG輸送の重要なチョークポイントで、供給混乱が長引けば**$130〜$150も視野という見方を伝えています。また、油価10%上昇でGDP成長率を15〜20bp**押し下げるとの推計も紹介しています。
このタイプの急落で見るべき順番
原油が止まるか
VIXが高値更新を止めるか
金利低下期待が戻るか
グロースが相対的に強くなるか
つまり、株価だけ見て底打ち判断をすると危険です。
一番大事なのは原油のピークアウトです。海峡封鎖懸念が後退しない限り、株の反発は続きにくいです。
過去の急落から学ぶ「下落率」と「回復」
歴史的には、S&P500の通常の調整は平均13.8%下落、ベア相場は平均35.6%下落です。1946年以降のベア相場の平均下落率は**32.7%**というReutersの別記事もあります。MFSも、1928年から2025年までの長期データで、下落の後には回復が続いてきたことを示しています。
ここから実務的に整理すると、
10%前後:普通の調整
15%前後:押し目買いと様子見が割れる
20%超:本格調整、銘柄選別必須
30%前後:ベア相場の中心レンジ
40%超:金融危機・パンデミック・バブル崩壊級
1か月後の傾向
単なる調整なら、1か月後には戻りやすい
ベア相場入りなら、1か月後の戻りはあっても、完全回復は別問題
Reutersによると、ベア相場は底まで平均1年強、元値回復までさらに約2年が平均で、短期反発と長期回復は分けて考える必要があります。
⑧ 長期で見れば誤差、というチャートの見方
長期投資の一番大事な視点はここです。
MFSは1928年から2025年までのS&P500データで、ベア相場を多数含んでも、下落の後には回復が続いてきたと示しています。Dimensionalも、2008年危機や2020年コロナ初期で計画を捨てた投資家は、その後の大きな上昇を取り逃したと指摘しています。
なので、長期で見ると急落は確かに「誤差」になりやすいです。
ただし正確には、
指数全体では誤差になりやすいが、個別の高PERグロースでは誤差にならないことも多い
これが重要です。Morgan Stanleyの資料でも、個別株は最大下落後に元値へ戻れないものが多いとされています。つまり、指数は戻りやすいが、銘柄は戻らないことがあるので、長期で放置できるのは“指数”に近い発想です。
では、今回のような局面での「具体的な底打ちサイン」は何か
一番分かりやすく整理すると、こうです。
底打ちの強いサイン
騰落レシオ 70割れ、理想は60台
松井の信用評価損益率 -20%前後以下
米VIX 40超、理想は50前後以上
日経平均VI 30後半〜40超、強い悲観なら50超
原油が高値更新しなくなる
悪材料継続でも株価の安値更新幅が縮小
反発が1日だけでなく、1週間〜1か月継続
成長株だけでなく、指数全体の値上がり銘柄数が増える
逆に、まだ底ではないサイン
VIXは高いが、原油がまだ吹き上がる
信用評価率が-20%に届かない
反発しても半導体・グロースだけで、内需や大型株がついてこない
1日だけ大陽線で、翌日に全否定される
海峡封鎖や戦争のニュースに市場がまだ過敏に反応する
説明しやすい「ひと言版」
「底打ちは、恐怖が最大化した瞬間ではなく、恐怖が最大化した後に、悪材料が続いても相場が下がらなくなる時です。」
さらに具体化すると、
「VIX50前後、日経VI40〜50、信用評価損益率-20%前後、騰落レシオ70割れ。このあたりがそろって、しかも原油の上昇が止まれば、かなり底打ちに近いと見やすいです。」
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