関西電力が金品受領や報酬補塡(ほてん)問題をめぐり旧取締役5人に損害賠償を求めて提訴した後、旧取締役の一人が現取締役に対し、直接電話で関電側訴訟代理人の弁護士2人の解任を求めたとして、関電が問題視する書面を大阪地裁に提出していたことがわかった。関電は「弁護士を降ろすよう圧力をかけてくることはきわめて異常で甚だ遺憾だ」と批判。旧取締役側は取材に電話したことは認めたが、解任要求は否定している。

 

関電関係者によると、電話をかけたのは、関電の社長や会長を歴任し、今年3月に相談役を退任した森詳介(しょうすけ)氏(80)。関電は東日本大震災後に赤字で電気料金を値上げし、役員報酬を減額した。しかし、当時会長の森氏が後からカット分の穴埋めを決めていた。  電話の相手は、6月に関電の社外取締役、訴訟対応などを担う監査委員長に就いた友野宏氏(75)。友野氏は新日鉄住金(現日本製鉄)の社長なども歴任。2011~13年、関西経済連合会で森氏が会長、友野氏が副会長を務めたこともある。  弁護士2人は関電が旧経営陣の法的責任を調べるために設置した「取締役責任調査委員会」の委員を務め、森氏はその調査に応じていた。森氏ら5人が後に地裁に提出した申立書では「利害関係のない社外の弁護士であると信頼して、不利な事実であろうが包み隠すことなく事情を説明した」と訴えている。  調査委は6月8日、森氏ら5人について取締役としての義務を怠り、関電に損害を与えたと認定。関電は委員のうち弁護士2人を訴訟代理人とし、同16日に計約19億円の損害賠償を求めて提訴した。  関電側の書面などによると、森氏は7月13日、友野氏に対し、関電が調査委員を務めた弁護士を訴訟代理人としたことを不当として「訴訟却下を申し入れる」と電話で通告。弁護士2人について「弁護士会に懲戒を申し立てることを予定しており、そうなれば世間を騒がせることとなる。現段階で交代させる方がよい」と求めたとしている。

朝日新聞社