【ロンドン=柳沢亨之】欧州からシリアに渡航し、イスラム過激派組織「イスラム国」に参加する女性が急増している。

 2月には英国から15~16歳の少女3人がソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で巧みに勧誘され、シリアに渡った。「イスラム国」は女性を戦闘員と結婚させることで、疑似国家の強化を図っている。

 ■優等生がなぜ

 英メディアによると、少女3人はイスラム教徒で、エチオピア系やバングラデシュ系の家庭出身。ロンドン東部で同じ中等教育学校に通っていた。2月17日、家族に「臨時の授業に行く」などと告げて民間機でトルコに渡り、シリア入りしたとみられる。

 学校周辺はイスラム教徒の移民らが多い。子供が同校に通うバングラデシュ系女性(30)は「『イスラム国』の間違った教義はこの街と無縁だったから、本当にショック」と話した。

 少女3人は全科目でオールAの優等生。このうち1人は陸上の選手でポップス音楽好きの少女だったが、昨年からパレスチナ情勢の動画を友人に送りつけるなど行動が変化。非イスラム教徒の生徒を「不信心者」と呼ぶようになった。

 ■SNSで接触

 3人組の1人は失踪前にツイッターで、2年前に「イスラム国」に参加した英国人女性(20)にメッセージを送ったとされる。この女性はスコットランド・グラスゴー出身の元医学生でシリアに渡航し、戦闘員と結婚した。ロンドンの「戦略対話研究所」によると、元医学生はブログで「イスラム国」での家庭生活は「真珠だ」などと美化。無料で与えられる家に「冷蔵庫や電子レンジもある」「料理や掃除に喜びを感じる女性は美しい」と宣伝しており、少女たちを勧誘した可能性が強い。少女たちは、男性戦闘員のツイッターなどもフォローしていたが、家族は気づかなかった。

 「イスラム国」の勧誘役はネットの宣伝に関心を示した少女らにSNSで接触し、シリアへの経路などを指示する。現地で女性は夫ら男性の付き添いなしに外出できず、旅券も奪われるが、「理想の世界」を演出して若い女性を誘い込む。
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最終更新:3月8日(日)13時21分