稼ぎ「虚偽」苦しむホスト 売掛金を肩代わり、業界は膨張 歌舞伎町の深層 | 実録! 歌舞伎町 NEWS 歌舞伎町アーカイブ

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ガツッ-。閉店後の静まり返ったホストクラブのホールに、革靴でテーブルを蹴り上げる鈍い音が響いた。

11月下旬、元ホストの佐藤大輔さん(23)=仮名=は、東京・歌舞伎町のホストクラブで3人の上司に囲まれ、詰問を受けた。

「それって爆弾でしょ」「来てくれなくなったらどう責任とんの」

次々と浴びせられる言葉が、佐藤さんの耳に威圧的に響く。「爆弾」とは、業界では禁忌とされている客を不快にさせる言動やほかのホストの客を奪うなど、店に損害を与える行為を指す。

「月20万払います」すぐ合意書に

数時間前、担当ホストに代わって佐藤さんが常連客に応対したときのこと。佐藤さんは、風俗で働く女性から性的サービスを受けることに抵抗があるという話をした。ホストクラブの客は性風俗で働く女性が多いことから、この発言が「爆弾」としてやり玉に挙がった。

囲まれてテーブルを蹴られ、「怖くて頭が真っ白になった」。口をついて出たのは「損害賠償として月20万円を半年払います」という言葉。すかさず印刷された合意書が差し出された。「ホストからの搾取も常態化しているのか」。サインをして解放されたが、それから店には近づいていない。

専門学校を出て保育士などとして働いた佐藤さん。歌舞伎町で大金を稼ぐホストを紹介する動画を見て、「たくさん稼いで、車も買って、女の子にももてる」ときらびやかな世界にあこがれた。

しかし飛び込んだ世界は、「思ったものと違っていた」。ヘアメーク代、衣装代、寮の費用…。次々と引かれていき、新人ホストの手取りは10万円にも満たない。最も嫌だったのは、蔓延(まんえん)する罰金制度だ。「もう戻るつもりは全くない」と吐き捨てた。