皆さん、夜ですがおはようございま~す竜雲です。
「猿若祭二月大歌舞伎」を待ちながら、一月の観劇レポを書こうと思います。
「石切梶原」こと「梶原平三誉石切」(かじわらへいぞうほまれのいしきり)、中村芝翫さんの松竹座でのご襲名披露演目です
橋之助さんが赤っ面のイヤな奴である俣野のお役。さっきまで「吉例寿曽我」の朝比奈であったのに赤っ面拵えチェンジが大変です...
俣野と並んでいるのは大庭三郎=中村鴈治郎さん。こちらは俣野ほど意地悪ではないお役ですが、梶原平三ほど良い人でもありません鴈治郎さんはやはり台詞が上手いなぁ~いい役者さんだなぁとこの演目を観て改めて思いました!
それから後ろのお大名に並んでらっしゃる方で私が今月初めてお名前とお顔を覚えた役者さんがいらっしゃいました。片岡松十郎さん。歌舞伎の化粧映えのする男前系のルックスの名題さんです。ファンが多いんですよ、とお友達から教えてもらいました
私は関西基盤の役者さんは知らない方の方が多いようです~。そういうものかしら
そういえば最初の演目(吉例寿曽我)では「きょうせんや!」と聞こえた大向こうも飛んでおり「??」でした・・・
上方で開催の歌舞伎を観に来た感がやはり強かったですよ!
中村芝翫さんがもちろん主役の梶原平三なんですが、花道からのご登場に松竹座も割れんばかりの拍手!やっと芝翫さんのご登場本当に素晴らしく錦絵みたいな姿でいらして、関西の方へのご襲名披露として非常に好ましく立派な印象でした!
そこへ中村東蔵さんの六郎太夫と、中村児太郎さんの梢が花道から登場
児太郎さんの梢はちゃっかり者で、義太夫に合わせてコケティッシュな動きをするところが可愛いようで面白いようで客席からも思わず「ふふふ」と笑いが(*´∀`)♪(笑)
中村東蔵さんは、老け役ですがあんまり顔に皺を書いていらっしゃいませんでした。
このくらい↓
前にこの演目を観た時は中村歌六さんがこの六郎太夫のお役をやってまして、歌六さんは悲哀の溢れるお父さんで、斬られるのか斬られないのかとハラハラしたものですが、東蔵さんは福々しくていらっしゃるのであんまり悲壮な感じには見えなかったです(私は。それにお話の筋をもう知ってしまっているので初回の観劇とは違って安心して見られたからかもしれません)
梶原は大庭に頼まれ、梢が持って来た刀の目利きをすることになります。
目利きをする時に梶原平三は懐紙を口にくわえてするんですが、どうしてなのだろう?そういえば理由を知らない私でした。
梶原平三の目利きではこれはまぎれもない銘作の刀!ということだったんですが、六郎太夫が言った値段が300両!(3900万円)
た、高い!!それほどの刀だってことなのでしょうけれども・・・
何やら印が入っていたようで、梶原の目が一瞬光ります。芝翫さんは「ここ一瞬ですけど大切な伏線のサインですよ」っていうのを観客にわかりやすく見逃さないように出してくださるので、そこが好きです
盛綱陣屋でも盛綱の心理がとてもわかりやくて、そのお陰でお話がすんなりと入ってきました。そこですよね!
大庭はわりといい人で買おうとするのですが、俣野が「いくら梶原殿の目利きの刀とはいえども切れ味もわからないものにそんなお金が出せるか!」と。橋之助さん、憎々しい俣野のお役、なかなか憎々しさが出ていて良かったのではないでしょうか
六郎太夫が「二つ胴の切れ味です」なんて言うので「じゃあ試してみよう」という展開に・・・
死罪が決まっている罪人を二人斬ろうって話になるんですねなんだかすごい展開だなぁと思います(^_^;)刀の切れ味を試すだけのために人間二人を斬るかねぇという、現代人ならではの私の感想は置いておいて、近くの牢に罪人をよこすように言いに行くことになります
この辺は「昔はこういうこともあったのかねぇ」と思いながら見るばかりです(^_^;)
ともあれ二つ胴の切れ味をお見せしましょう、試してみましょうで一致する一同。
しかし!ここで牢役人がやってきて「死罪にする罪人が一人しかいません。いかがはからいましょうや」みたいなことを皆に告げるのです。
この牢役人役が橋吾さんです。ほんのちょっと、一言それを言って引っ込むという、本当にとっても短いお役です~・・・もっと長いお役ならいいのに。
でも聞いた話ではこのお役は実はわりと重要なお役で台詞も細かい決まりごとがあったり、あと名題のお勤めになるお役なんだそうです。誰がやってもいいお役ではないそうなんです
罪人一人しかいないよ、どうしよう
それが舞台上の新しいテーマになります。
六郎太夫は「二つ胴の切れ味の折紙(証書みたいなもの)が家にあるから取ってきてほしい」と梢に頼み、梢は花道から小走りで駆けていきます。
六郎太夫は娘夫婦にお金をあげたいので、自分が斬られる二つ胴のひとつになる決意をしたのです。
芝翫さん演じる梶原は黙って聞いています。
ここで大庭は「望みのとおり試してくりょう!二つ胴が斬れたら500両でも千両でもやろう」と言っているので、そんなに悪い人ではないよね、と思いました。
鴈治郎さんは少し冷たい合理主義な感じの大名を好演されてました!
俣野の号令で罪人が一人連れられてくるのですが・・・これが坂東彌十郎さん
ここで連れて来られる罪人が、髪も眉毛もぼうぼうで、変な格好に縛られていて、水色のかんたんな浴衣みたいな衣装で、びーびー泣いてますし、何ともコミカルなのです!
でも前に観た時は男女蔵さん、そして今回は彌十郎さんと・・・大きな役者のお役であることが不思議です
ちらっと「彌十郎さん、まさか今月このお役だけじゃないでしょうね~」と観劇中に思ったのですが、夜の部の「雁のたより」ではかっこいいお役で出てらっしゃいまして、良かったと思いました(笑)
このオモシロ罪人だけではね・・・(^_^;)
酒づくしの台詞もありますが、この演目の中では客席からの笑いをいただくお役ですね~。本当にコミカルな罪人で、なんだろうなぁ(笑)
で、罪人の胴が斬られる時はもちろん人形になってスパッと斬られます。
ですのでいつの間にか罪人がいなくなっているんですよ!あれ!?いつの間にいなくなったんだろうと思ったんです!
舞台の他のドラマに気を取られているうちにいなくなっている罪人。どのタイミングでどうやっていなくなったのか気になりました
義太夫が六郎太夫は「未練で泣き叫ぶよりも、覚悟が決まっているので涙は一粒こぼれただけ。それが却って哀れだ」という意味のことを語っていました。
梶原もそんな六郎太夫にもらい泣き
この演目を初めて観た時には「そんなぁ~~!!お父さんどうなっちゃうの~?」とハラハラしながら観たのですが、ハッピーエンドだともう知っている私の頭はどこかこの場面も冷静に観てしまってました
この演目に対して初々しくなくなったんだなぁと自分で思いながら観劇していました(´ω`)
そんなところに梢が戻って来てしまって、縛られている父親を見て全てを悟ります!
動転して居並ぶお役人皆に「ととさんを助けてください!代わりに私の身体で試してください!」と泣き叫びますが誰も何もしてくれません。梶原も黙っています。
児太郎さんの梢は一生懸命の懇願でしたが、当て身で気絶させられる梢。
お父さんは斬られる覚悟でうつ伏せに。
そしてここで牢番?が先程まで彌十郎さんが勤めていらっしゃったコミカルな罪人の身体を抱えて連れて来ます。罪人は人形に替わってます。梶原が「ええい!」と煌めく銘作の刀を降り下ろすとスパッ!と斬れるその罪人の人形の胴体
そこはあまりにスパッといくので客席からも思わず笑いが私もそこは笑っちゃいます(笑)
そのタイミングで梢が目を覚まし「ととさん!ととさん!」と泣いて取りすがるのですが、あれ?お父さんの身体はどこも斬れていない、と気づく件も面白くて、ここでも笑いがw
その間、芝翫さんお勤めの梶原はずっと刀を見つめてまして、素晴らしい刀と出会った沸々と湧く喜びをかみしめているような表情でいらっしゃいました
俣野は悪態をついて去って行き、そして大庭も「お金を出すところだったわい」みたいなことを言って去ってゆきます。鴈治郎さんの大庭、良かったです!
銘作の刀には「八幡」=源氏に所縁の印。平家がたの梶原ですが、実は源氏に心を寄せていることを義太夫に乗せて表します。
(舞踊のようにして物語を語るところです)
芝翫さんの義太夫に乘られているところはかなり好きでして、ついつい見入ってしまいました
六郎太夫は刀を馬鹿にされたことが悔しい。と言うので梶原はなんと手水鉢(というか神社の手水を入れる石の器と同じ大きさ)を斬ってみせようというのです
キラリと光る刀・・・
そして刀を構えた緊張感
こちらも息を呑んでしまう緊張の一瞬でした!
スパッ!!
なんと手水鉢すらも斬れて、その間を走って子供みたいにニッコリと笑って嬉しそうな梶原「刀も刀、斬り手も斬り手」
芝翫さんのにっこりされたお顔は客席が笑顔になってしまうんです♪
緊張が緩んで笑顔になるこの瞬間こそがこの演目の醍醐味かと。
「刀は私が買い取ってあげるので、二人とも来なさい」と
ここで梢がまたちゃっかりと嬉しそうに梶原と笑うところも面白かったですw
梢ってちゃっかり者として描かれていますね♪
そして満足そうに笑って花道から引っ込む芝翫さん
私が松竹座で初めて観劇の日には「神谷町!」と大向こうが入って、
ああ、関西でも神谷町の大向こうを入れてくれるんだなぁと嬉しく思いました
さすがのご襲名披露演目で、ラストの花道なんて私も心の中で「かっけー!」(言葉は悪いですが、かっこいい!ということです)と思ってました~
ほんとに「かっけー!」って大きな拍手をしました。
そしてそれに続くようにして東蔵さんと児太郎さんの親子引っ込み。やはり花道です。
拍手!完。
ハッピーエンドで時代物でかっこよく、息を呑んだり笑ったり、楽しかったです
芝翫さんの座る敷物を敷いている従者に橋光さんがいらっしゃいましたか?ササッと素早くいなくなられましたし上から双眼鏡だったもので自信がありませんが、きっとそうかなと思って見てました。
襲名披露なので裏でお支えすることが多いですよね。また芝翫さんがシンをお勤めの時に橋光さんのトンボを見たいですけど
六月は襲名披露演目、何になるんでしょうねぇ?気になりつつ今月の「石切梶原」でした~
それでは皆さん、良い夜を~