村田製作所においては 3カ年の新中期経営計画として 2021年度に売上高2兆円を目指す とされています。

ICAC5(アイカック5)=(IoT、Cloud、AI、Car、5G)の需要拡大は 村田製作所にとって大きな追い風となります。特に車載向け、通信向けで当面の収益拡大を図りながら エネルギーや医療・健康分野での新規事業を模索する計画とされています。

 

村田製作所 直近の決算においては、カーエレクトロニクス向けにMLCCが堅調に推移したほか、基地局向けに中高圧品の需要が拡大したためMLCCが増加した他、安全装置向けに超音波センサ、MEMSセンサが増加した  となっています。

 

 

 

🔅MLCC

 

村田製作所、太陽誘電、TDK は、MLCC(チップ積層セラミックコンデンサ)メーカーとしてICAC5の恩恵を最も受ける銘柄群になると思われます。

 

自動車用MLCCについては 前々回投稿を参考にしてもらいたいのですが、基地局向けの中高圧品とは「500V定格の高周波用低損失積層セラミックコンデンサ」等のことですが、移動体通信、WiMAX、LTE基地局の整合回路、カップリング回路、RF高周波モジュール等において機器の高周波特性を改善できます。

 

今後 5G基地局が加速していくわけですが、「5G対応基地局の世界市場は2023年に、2019年比約38倍の4兆1880億円に達する」(富士キメラ総研)とされているわけで 自動車用MLCCの需要も加速している中で  MLCCの需給逼迫は 2020年代になっても解消されない可能性があります。

 

村田製作所は、2019年3月期1QにMLCCの全品種、全顧客向けの値上げ交渉を開始しています。一律値上げではなく、顧客ごとに値上げ交渉を行っている とされていますが、仮に5%の値上げとした場合 約 300億円の営業利益増加になるようです。

MLCCの値上げは、村田製作所のみならず  太陽誘電、TDKにとっても かなりの恩恵になるものと思われます。先行して値上げを行なった 太陽誘電 2019年3月期第3四半期の決算説明においては増益要因としてMLCC等 値上げにより24億円としています。

 

 

 

🔅 超音波センサー

 

矢野経済研究所によると 2020年におけるADAS、自動運転用センサーの世界市場は、1兆6688億円、  そのうち 超音波センサー市場は 838億円 となっていますが、ドライバーの死角となる歩行者や他車などを検知して安全性を高めるシステムにPAS(駐車支援システム)の応用が検討されており、超音波センサーは そのキーデバイスとなります。

 

村田製作所の超音波センサーは セラミック材料技術、高精度セラミック加工技術、高効率超音波センシング技術を融合することで、高感度な超音波センサーの開発が行われており、ユーザーの期待に応えています。

 

 

 

🔅 MEMS

 

フィンランド Murata Electronics Oy (旧VTI Technologies Oy)は、2012年に村田製作所の開発・生産子会社となり、3D MEMSセンサーの研究、設計、生産を専門的に行っており、MEMS技術を核とした成長戦略が模索されています。

 

レベル4以上の自動運転では、高度なセンシングと動的アルゴリズムが必要であり、それを可能にするためには高精度な慣性センサーの開発が急務となっており、ジャイロセンサーや加速度センサー、傾斜センサー等の3D MEMSセンサーは先進運転支援システムにおいて不可欠な存在となってきます。

 

アンチロックブレーキ (ABS)、横滑り防止装置 (ESC)、横転防止(ROV)、電子制御サスペンション (ECS)、電子パーキングブレーキ (EPB)、坂道発進アシスト機能 (HSA)、タイヤ空気圧監視(TPMS)、盗難防止(不在時異常振動検知) 、カーナビゲーションシステムの位置検出精度の向上等には全て MEMSセンサーが使用されています。

 

また 医療分野において DNA、タンパク質、細胞を対象とした生体計測等のナノ領域にも3D MEMSセンサーが活用されています。

その他  船舶市場、建機市場、農機市場等にも活用されています。

 

 

 

🔅メトロサーク

 

5G時代には 表面波(SAW)フィルター、デュプレクサ等 村田製作所がトップシェアとなる通信系電子部品の更なる増加が予想される他、5G時代を見据えて開発されてきた 樹脂多層基板「メトロサーク」も売上げに大きく貢献すると思われます。

 

メトロサークの売上げは、前四半期に比して若干の落ち込みとなっていますが、それでもMLCC 37.1%に次ぐ  通信モジュール 29.7%の稼ぎ頭であり、村田製作所の看板商品として今後の5G時代において益々大きな存在になると思われます。21年にはメトロサーク 売上げを1000億円まで拡大させる計画 とされています。

 

4Gの10倍以上の高速・大容量通信スペックである5G、 4K/8Kの超高解像度動画や大量のデータ伝送、 自動運転やVR/AR技術と融合させる5G通信インフラサービス等 においては、メトロサーク等のLPC(液晶ポリマー)基盤が キーデバイスのひとつになる といわれています。

 

村田製作所では、LCP原材料フィルムから内製化しており、その原料工程も増産することになっています。生産子会社の伊勢村田製作所(三重県津市)に40億円を投じて 19年4月の竣工を目指して新たに生産棟を建設中であり、ポリマーフィルムを用いた銅張積層板の能力増強予定とされています。

 

 

 

🔅電池事業 と 全固体電池

 

ソニー電池事業買収による 村田製作所 電池事業は 1、2年後の黒字化が見えてきた といわれています。 当面 既存のリチウムイオン二次電池 や 新規開発の産業向けコイン形二酸化マンガンリチウム電池(コイン電池)の販売で黒字化を目指し、ウェアラブル向けには 本年度中に投入予定とされる 薄膜型全固体電池での参入を目論むものと思われます。

 

村田製作所は「CEATEC JAPAN 2018」(2018年10月16~19日、幕張メッセ)に薄膜型全固体電池を出展しています。 

TDK子会社 エプコス開発の 全固体電池 CeraCharge(セラチャージ)よりもエネルギー密度が高い といわれる村田製作所の全固体薄膜電池は、樹脂フィルム上に熱処理が不要な正極材料と酸化物系固体電解質(LiaGebPcO4)、負極材を単層重ねたセルとすることで、フレキシブル性が確保されています。

 

薄くて小さい電池が作れるフレキシブル性から IoTデバイス、ウェアラブルデバイスとして 携帯電話やパソコンのみならず ヘッドマウントディスプレイ等のメガネ型端末やネットとの接続で視界に映像を合成してくれる スマートコンタクトレンズ、ペースメーカー、体内に埋め込み可能な薬用ポンプ、補聴器 等 エンターテイメント分野や医療分野、スポーツ分野等での活躍も期待出来そうです。

 

 

 

 

上記のよう村田製作所がトップシェアを確保している電子部品群は 今後の5G時代に見事に合致したものが多く、特にMLCCの値上げ効果とメトロサークの売上げ拡大が当面の村田製作所の業績を引き上げていくと予想されます。

中長期的には ソニーから買収した電池事業や全固体電池 もメトロサーク同様 いずれ花開く時が来るものと思われます。

 

 

前回投稿時で各証券会社会社では 2万3000円~2万5000円のレンジでの目標株価となっている  としていますが、当時のメトロサーク赤字縮小段階から 現在は メトロサークは利益寄与、売上げ拡大段階に入っていることや 5Gの拡大傾向から 更なる上乗せが期待できると思われます。